ダスコ・ゴイコヴィッチ

ダスコ・ゴイコヴィッチ：バルカンが生んだジャズトランペットの巨匠

ダスコ・ゴイコヴィッチ（Dusko Goykovich）は、20世紀後半から21世紀初頭にかけて、ヨーロッパのジャズシーンを牽引したセルビア出身のトランペット奏者、作曲家、編曲家です。旧ユーゴスラビアのヤイツェで生まれた彼は、1948年からベオグラード音楽アカデミーで音楽を学び、ディキシーランド・バンドでの演奏を経て、ラジオ・ベオグラードのビッグバンドに参加しました。

国際的な舞台へ

その後、西ドイツへ移り、フランクフルト・オール・スターズで初のアルバムを録音。クルト・エーデルハーゲンのオーケストラでの活動後、チェット・ベイカー、スタン・ゲッツ、オスカー・ペティフォードといったジャズの巨匠たちと共演し、その才能を開花させました。1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルへの出演は、彼に国際的な注目を集めるきっかけとなりました。

1961年には、バークリー音楽大学へ奨学金を得て留学し、ハーブ・ポメロイに師事。音楽理論と作曲の研鑽を積みました。1966年に発表したアルバム『スインギン・マケドニア』は、バルカン半島の音楽にインスパイアされたオリジナル曲で構成され、彼の音楽的ルーツを色濃く反映した作品として評価されています。

多彩な音楽活動

ゴイコヴィッチは、マイルス・デイヴィス、ディジー・ガレスピー、ジェリー・マリガン、ソニー・ロリンズ、デューク・ジョーダン、スライド・ハンプトンなど、数多くのジャズミュージシャンと共演。1968年から1973年までは、ケニー・クラーク＝フランシー・ボラン・ビッグ・バンドに在籍し、ヨーロッパのジャズシーンを盛り上げました。

1986年には自身のオーケストラを結成し、リーダーとして精力的な活動を展開しました。『ソウル・コネクション』（1994年）、『ビバップ・シティ』、『バルカン・ブルー』（1997年）、『イン・マイ・ドリームス』（2001年）、『サンバ・ド・マー』（2003年）、『サンバ・チガーネ』（2006年）など、数多くのアルバムをリリースし、自身の音楽性を追求し続けました。

2004年には、セルビアの州昇格200周年を記念するパフォーマンスを行い、オールスター・ビッグバンドを率いて演奏。また、75歳の誕生日には、ベオグラードのセルビア共和国州議会議事堂でグランド・コンサートを開催し、その音楽人生を祝福しました。

晩年と遺産

2013年には、ドイツのブランデンブルク劇場でブランデンブルク管弦楽団との共演によるライブ演奏『ザ・ブランデンブルグ・コンサート』を実現。同年には、マーティン・ヤコノフスキーをフィーチャーしたアルバム『ラテン・ヘイズ』をリリースしました。

2023年4月5日、ダスコ・ゴイコヴィッチは91歳で逝去。彼の音楽は、バルカン半島の豊かな音楽性とジャズの融合という、他に類を見ない独自のスタイルで、多くの人々に感動を与え続けました。彼の音楽的遺産は、後世のジャズミュージシャンに大きな影響を与え続けるでしょう。

主要ディスコグラフィー

『スインギン・マケドニア』 - Swinging Macedonia (1966年)
『ベオグラード・ブルース』 - Belgrade Blues (1967年)
『ソウル・コネクション』 - Soul Connection (1994年)
『バルカン・ブルー』 - Balkan Blue (1997年)
『サンバ・ド・マー』 - Samba Do Mar (2003年)
『ザ・ブランデンブルグ・コンサート』 - The Brandenburg Concert (2013年)
* 『ラテン・ヘイズ』 - Latin Haze (2014年)

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