ダヌィーロ・アポーストル

ダヌィーロ・アポーストル：コサックの頭領、ヘーチマンとしてウクライナの自治に尽力

ダヌィーロ・アポーストル（1654年12月4日 - 1734年1月17日）は、17世紀後半から18世紀にかけてのウクライナ・コサックの重要な人物です。彼はムィールホロド連隊の連隊長を長年務め、後にヘーチマン国家（左岸ウクライナ）のヘーチマンに選出されました。「独眼の頭領」という異名を持つアポーストルは、激動の時代においてウクライナの自治権を守り、国家の安定と発展に貢献しました。

生涯

1654年、アポーストルはコサック長官の家庭に生まれました。彼の父は元々モルダヴィアの貴族でしたが、フメリニツキーの乱に参加し、後にムィールホロド連隊の連隊長となりました。父の死後、アポーストルは若くして連隊長に選ばれます。

アポーストルは、当初、前ヘーチマン派であったため解任されるなど、必ずしも順風満帆ではありませんでした。しかし、1693年に再任されると、卓越した軍事的手腕を発揮し、クリミア・ハン国との戦いで数々の勝利を収めました。アゾフ海遠征にも参加し、要塞攻略に貢献するなど、その勇名はロシア国内にも轟きました。

大北方戦争では、ロシア軍の一員としてスウェーデン軍と戦い、ポーランドでの勝利にも貢献しました。しかし、アポーストルはヘーチマン国家のロシアからの独立を願っており、スウェーデン軍と内通するも、最終的にはロシア側に帰順。ピョートル1世から赦免され、ポルタヴァの戦いにも参加しました。

1722年、ロシア・ペルシャ戦争ではコサック軍を率いて出陣。デルベント要塞での戦いで右目を失い、「独眼の頭領」と呼ばれるようになりました。1723年には、ヘーチマン国家の自治権回復を求めましたが、ピョートル1世によって逮捕、監禁されました。しかし、ピョートル1世の死後、解放され、1727年にはヘーチマンに選出されました。

ヘーチマンとしてのアポーストルは、国家の安定と発展に尽力しました。検地を行い、違法に私領となった土地を国に戻し、国家予算の収支を明らかにするなど、経済改革を推進しました。また、裁判制度の改革も行い、法的手続きの明確化を図りました。

ヘーチマンとしての功績

アポーストルは、ロシアとの関係においても、ヘーチマン国家の権益を守るために尽力しました。アンナ女帝の時代には、ウクライナ駐屯ロシア軍の縮小、コサックの赦免、差別税率の解除などを実現しました。また、キエフをヘーチマン直轄領とし、ヘーチマン政府におけるロシア人役人の削減、ロシア人によるウクライナでの土地購入の禁止など、ウクライナの自治権を強化する政策を推進しました。さらに、1708年に破壊されたザポロジャのシーチの復興にも成功しました。

死後

1734年、アポーストルは心臓麻痺により死去しました。彼の死後、ヘーチマン国家は一時的にロシア帝国への合併を免れました。アポーストルの功績を称え、2006年には彼の生地に銅像が建てられました。

ダヌィーロ・アポーストルは、激動の時代において、卓越したリーダーシップと外交手腕を発揮し、ウクライナ・コサックの自治を守り抜いた英雄として、今もなお記憶されています。

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