ダヌ人民解放軍

ダヌ人民解放軍（DPLA）

ダヌ人民解放軍（略称：DPLA）は、ミャンマー連邦共和国に存在する民族武装組織の一つです。ビルマ語ではဓနုပြည်သူ့လွတ်မြောက်ရေးတပ်、英語ではDanu People's Liberation Armyと表記されます。主にダヌ族を主体として構成され、ダヌ自治区を活動拠点としています。この組織は、ダヌ人民解放戦線（DPLF: Danu People’s Liberation Front）の軍事部門としての役割を担っています。

歴史的背景

2008年に制定されたミャンマーの憲法に基づき、ダヌ自治区はシャン州内に位置する5つの自治区の一つとして位置づけられました。特筆すべき点として、2021年2月に発生したミャンマークーデター以前は、他の自治区や自治管区とは異なり、ダヌ自治区内には公然と活動する武装勢力が存在していませんでした。

しかし、クーデター勃発直後、ダヌ族の若者たちは軍事政権による厳しい弾圧の対象となりました。これに対し、当初は非暴力的な手法で抵抗を示すデモ活動に参加しましたが、平和的な抵抗の限界が明らかになるにつれて、武装による抵抗へと方針を転換せざるを得なくなりました。この動きに伴い、ダヌ自治区内でも軍事政権に対抗するための国民防衛隊（PDF）が複数結成されました。2023年8月時点では、この地域で少なくとも8つのPDF組織が活動しているとされています。

武装闘争の激化に対処するため、ミャンマー軍側も独自の動きを見せています。PDFに対抗するために、軍は親軍派の民兵組織を編成・強化しています。ユワンガン郡区の区長からの情報によれば、これらの民兵は地元のダヌ民族民主党や地域企業からの支援を受けていると伝えられています。また、2022年にはダヌ自治区行政評議会の議長であったウー・アーカーリン氏が、「ダヌ軍」（Danu Army）という名の民兵組織を創設する計画を進めていましたが、地元住民からの強い反対に遭い、この計画は頓挫しました。

DPLFおよびDPLAの結成

DPLAの政治部門にあたるダヌ人民解放戦線（DPLF）は、2022年8月7日に正式に組織されました。その後、約1年間の準備期間を経て、2023年7月29日にその存在が公に発表されました。DPLFのメンバーは、ミャンマー北部で活動する有力な民族武装組織であるタアン民族解放軍（TNLA）の実効支配地域で軍事訓練を受けたとされています。

DPLFの結成が公表された直後の2023年には、組織との関連を疑われた4名の住民が当局によって拘束されるという出来事が発生しており、組織の登場が地域住民にも影響を与えていることが示唆されました。

主な活動

DPLAは、その名の通りダヌ自治区を中心とした活動に加え、シャン州北部の一部地域でも活動しています。特に、TNLAが主導し、多くの反体制勢力が参加した大規模な軍事作戦である「1027作戦」において、DPLAは作戦の第一段階および第二段階にタアン民族解放軍と共に参加し、軍事政権軍との戦闘に関与しました。

近年では、2024年11月30日以降、ヤッサウッ郡区内のチャウクー地区において、ミャンマー軍部隊との間で激しい衝突が発生しました。この戦闘の最中に、DPLAの兵士7名がめまいや嘔吐といった体調不良を訴える事態が発生しました。DPLA側は、これらの症状の原因として、ミャンマー軍が戦闘において化学兵器を使用した可能性を主張し、軍を強く非難しています。

DPLAの活動は、ダヌ自治区における反体制勢力の一つとして、軍事政権に対する抵抗運動の中で重要な位置を占めています。

もう一度検索