ダブリンバス

ダブリンバス（アイルランド語: Bus Átha Cliath、英語: Dublin Bus）は、アイルランドにおける主要な公共交通事業者であるアイルランド交通グループの一翼を担う路線バス運行会社です。主にアイルランドの首都圏、具体的にはダブリン県を中心に、隣接するキルデア県やウィックロー県の一部でもサービスを提供しています。その本社は、ダブリン市の中心部に位置するオコンネル・アッパー通りに置かれています。

沿革

ダブリンバスは、1987年2月2日にアイルランド交通グループが組織再編された際に、バス・エールンおよびアイルランド国鉄と共に3つの主要子会社の一つとして設立されました。効率化を追求する動きの中で、2010年4月にはダブリン市内の多数の路線について、サービス内容を簡素化する計画が公表されました。しかしながら、この施策の一環として、残念ながら150名の雇用が失われることにもなりました。

技術革新も進められ、2010年代に入ると、一部のバス停留所において、バスの到着予定時刻をリアルタイムで表示する「リアルタイム乗客情報」システムが導入されました。

近年の利用状況を見ると、2016年の年間旅客数は1億2500万人を記録しましたが、これは2005年の水準と比較すると14%の減少でした。これは、同時期に開業し、利用者が33.6%増加したLRT（Light Rail Transit）であるルアスなどの影響も考えられます。

さらに、2018年9月から2019年3月にかけて、ダブリンバスが運行していた24路線とこれに充当されていた125台のバス車両は、アイルランド国家運輸局の決定により、段階的にゴーアヘッド・アイルランドという別の事業者に引き継がれました。この路線の移管と並行して、ダブリンバスには新たな車両が導入され、ゴーアヘッドが引き継いだ路線と同日に新たな路線も運行を開始しています。

路線網

ダブリンバスが運営する路線網は、ダブリン市内からグレーター・ダブリン・エリアにかけて広範囲に及びます。現在のネットワークには、中心部から放射状に延びる路線、都市を横断する路線、そして郊外を結ぶ周辺路線など、多様なタイプを含む110もの日中路線に加え、深夜帯に運行される18の夜行路線（Nitelink）が含まれます。これらの路線は、毎日平均して約32万5千人の人々に利用されています。

主要な放射状路線の中には、バス専用レーンなどを活用したバス高速輸送システム区間を運行するものもあります。また、「エクスプレスバス（Xpresso）」と呼ばれる種別は、既存の路線を踏襲しつつも、停車停留所を主要な場所に限定することで速達性を高めています。エクスプレスバスは通常の路線よりも最低運賃が高く設定されており、月曜日から金曜日のピーク時間帯にのみ運行され、祝日は運休となります。

夜間バスである「Nitelink」は、かつては月曜日から土曜日まで18路線で運行されていましたが、2009年1月以降、アイルランドの経済状況悪化に伴う人員削減の影響で、週半ばの運行が廃止されました。Nitelink路線には通常の路線とは異なる特別運賃が適用されます。

さらに、ダブリンバスは通常の路線バスサービスに加え、観光客向けのユニークなツアーも提供しています。その一つが「ゴースト・バス・ツアー」で、聖ケビン教会や聖オードアン教会など、幽霊が出ると言われている場所を巡るというものです。このツアーは主に夕方以降に運行され、参加者は途中の2つの停留場でバスを降りて、心霊スポットとされる場所を実際に訪れる機会が設けられています。

空港アクセスという点では、ダブリン市中心部とダブリン空港を結ぶ空港連絡バス「エアリンク（Airlink）」の運行も担当しています。

今後の展望

ダブリンのバスサービスに関しては、2018年7月にアイルランド国家交通局（National Transport Authority）が大規模な改革案を発表しています。この提案では、既存路線の抜本的な見直しが計画されており、路線の番号変更、主要な目抜き通り沿いへの路線集中化、運行頻度の増加などが含まれています。また、運賃体系の簡素化も重要な柱の一つとされており、統合された発券システムによる無料乗り換えの実現などが目指されています。さらに、新たな軌道路線の運行計画も盛り込まれており、ダブリンの公共交通全体の利便性向上が期待されています。

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