ダブル・クラッチ (映画)

映画『ダブル・クラッチ』：過酷な現実と復讐のドライブ

1978年、松竹によって世に送り出された映画『ダブル・クラッチ』。五木寛之の同名短編小説を原作とするこの作品は、郷ひろみ演じる主人公・早田彰彦の破天荒な人生を描いています。

彰彦は姉の真紀と二人暮らし。昼は鉄道売店、夜はキャバレーと、彼は厳しい労働に明け暮れていました。一方、弟の彰彦はパチンコに熱中する日々を送っていました。そんな中、高校時代の恩師である木島（地井武男）が二人の前に現れます。木島は実は真紀と恋愛関係にあったのです。

ある夜、キャバレーでチンピラに絡まれた真紀を庇った彰彦は、彼らを必要以上に殴ってしまいます。この事件をきっかけに、彰彦は深い落胆を感じます。そんな彼を、木島は信州へのドライブに誘います。ドライブを通じて、彰彦は運転に興味を持つようになり、教習所に通い始めます。しかし、彼の荒々しい運転は検定合格を困難なものにします。それでも、木島の指導やアドバイスもあり、彰彦はついに運転免許を取得。憧れのマイカー、スバル・レオーネを手に入れます。

教習所で知り合った和子（森下愛子）を乗せてドライブを楽しむ彰彦でしたが、ある日、衝撃的な事実を知らされます。それは、木島が妊娠中の真紀を甲府の険しい山道に車で連れて行ったことが原因で、真紀が流産し、命を落としたという事実でした。

激しい怒りに燃える彰彦は、姉の死の責任を木島に問いただし、復讐を決意します。彼は木島をカーチェイスで山道へと追い詰め、激しいぶつけ合いの末、木島の車を崖下に突き落とします。木島は全治6ヶ月の重傷を負い、彰彦の復讐は成功したのです。

物語の最後、カーラジオから流れる木島の事故のニュース。それは脇見運転による事故と報道されていました。彰彦は、今は亡き姉、真紀への想いを胸に、車を走らせるのでした。

この映画の舞台となったのは、山梨県の石和温泉から甲府にかけての甲州街道（国道20号）。電車と踏切のシーンは身延線を使用しており、165系急行富士川（現在の373系特急ふじかわ）が登場するなど、昭和の時代を感じさせる映像も魅力のひとつです。また、踏切の警報機は、電子発振音ではなく、昔ながらの電鈴を使用している点も注目に値します。

郷ひろみ、松坂慶子、森下愛子、地井武男ら豪華キャストが織りなす人間ドラマと、手に汗握るカーチェイスシーンは、観る者の心を掴んで離しません。昭和レトロな雰囲気と、復讐という重いテーマが絡み合う、独特の世界観を持つ『ダブル・クラッチ』。一度ご覧になることをお勧めします。

キャスト

早田彰彦：郷ひろみ
早田真紀：松坂慶子
平岩和子：森下愛子
木島巧：地井武男
細井：河原崎長一郎
モモ子：一氏ゆかり
パブのマスター：木村元
竹下：青木卓司
試験官：吉田豊明

同時上映

オレンジロード急行（主演：嵐寛寿郎／監督・脚本：大森一樹）

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