ダムビン・チャグダルジャヴ

ダムビン・チャグダルジャヴ（Дамбын Чагдаржав、Dambyn Chagdarjav、1880年 - 1922年8月22日）は、20世紀初頭のモンゴルにおいて、激動の時代を生きた政治家であり、革命家です。彼は、モンゴル人民革命党の結成に深く関わり、「最初の7人」の一人として知られています。1921年には短期間ながらモンゴル臨時政府の首相を務めましたが、その後の政治的混乱の中で処刑されるという悲劇的な最期を遂げました。

生い立ちと初期の活動

1880年、現在のセレンゲ県に生まれたチャグダルジャヴは、若い頃から商人として活動し、1916年から1917年にはイギリスとロシアを訪れるなど、国際的な視野を広げました。これらの経験は、彼の後の政治活動に大きな影響を与えたと考えられます。

モンゴル人民党の結成

1919年、チャグダルジャヴは、ドグソミーン・ボドーやホルローギーン・チョイバルサンらと共に、秘密革命組織「領事館丘グループ」（Konsulyn Denj）を結成しました。このグループは、モンゴルにおける革命運動の中核となり、ソリーン・ダンザン、ダムディン・スフバートルらの「ズーン・フレー・グループ」（東庫倫グループ）と連携し、1920年にモンゴル人民党（後のモンゴル人民革命党）を結成しました。

1920年、チャグダルジャヴは、モンゴルの中国からの独立支援を要請するため、スフバートル、ダンスランビレギーン・ドグソム、ダンザン、ボドー、チョイバルサン、ダリザビーン・ロソルらと共にソビエト・ロシアを訪問しました。この際、チャグダルジャヴとダンザンはモスクワでウラジーミル・レーニンと会見し、後のモンゴルにおける共産主義運動の展開に重要な役割を果たしました。この訪ソ団のメンバーは、後に「最初の7人」としてモンゴルの歴史に名を残すことになります。

臨時政府首班

1920年10月、ロマン・ウンゲルン率いる白軍がモンゴルに侵入するという事態が発生しました。1921年2月、ウンゲルンが首都ニースレル・フレーを占拠すると、3月1日から3日にかけて、モンゴル人民党はソ蒙国境のトロイツコサフスクで会議を開催しました。この会議で、ダンザンが党議長に選出され、党綱領として「10項目の原則」が採択されました。この会議は後に、モンゴル人民革命党の第1回党大会と位置づけられ、モンゴルが共産主義運動に加わることを宣言しました。

1921年3月13日、党大会後、モンゴル臨時人民政府が樹立され、チャグダルジャヴは初代首相に就任しました。しかし、同年4月16日にはウリャンカイ（トゥヴァ）政府代表となり、後任の首相にはボドーが就任しました。チャグダルジャヴの首相としての期間は短く、その後のモンゴルの政情不安を象徴するものでした。

死

1922年、チャグダルジャヴはボドーと他の4人の元閣僚と共に、人民政府打倒と反革命の罪で逮捕され、同年8月31日に処刑されました。チャグダルジャヴとボドーの処刑は、1920年代から1930年代にかけてモンゴルで起きた粛清の始まりと見なされており、当時の政治的対立と混乱を如実に物語っています。彼の処刑は、モンゴルにおける初期の共産主義運動の複雑さと悲劇を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

チャグダルジャヴは、モンゴル人民革命の初期において重要な役割を果たしましたが、その後の権力闘争の中で犠牲となりました。彼の短い生涯は、モンゴルが近代国家として歩み始めた時期の混乱と、社会変革を求める人々の情熱と苦悩を映し出しています。

もう一度検索