ダムディン・スフバートル

ダムディン・スフバートル（1894年2月2日 - 1923年2月22日）は、モンゴルの革命家であり、軍人として重要な役割を果たしました。彼の生涯は、激動の時代におけるモンゴルの独立と近代化への道のりを象徴しています。

生い立ちと初期の活動

スフバートルは、遊牧民の子として生まれました。彼の名前「スフ」は斧を、「バートル」は英雄を意味します。幼少期にはジャミヤン公の私塾で読み書きを学び、教育を受けました。この頃の経験が、後の彼の活動に大きな影響を与えたと考えられます。

ボグド・ハーン政権下では、モンゴル国軍に入隊し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。1919年頃には、印刷所で植字工として働いていた時期もあったとされています。この時期の様々な経験は、彼の多面的な人物形成に寄与しました。

独立運動への参加

1918年、中国軍が外モンゴルに侵入し、キャフタ協定で獲得した自治を撤廃すると、スフバートルは独立運動に身を投じます。この侵攻は、モンゴル民族の独立への意識を高める契機となり、スフバートルもその流れに大きく関わりました。

1920年10月には、中国軍の無力化に乗じて、ウンゲルン率いる白軍がクーロン（現ウランバートル）に進駐し、中国軍を駆逐しました。しかし、ウンゲルンの政治は苛酷を極め、モンゴル民衆は民族的な独立を強く求めるようになりました。このような状況下で、スフバートルはモンゴル人民党（後のモンゴル人民革命党）の結成に深く関わります。

革命と軍事指導

1920年、スフバートルはチョイバルサンらとともに、ボドー、ダンザンらを中心にモンゴル人民党を結成し、軍事部門を担当しました。彼はモンゴル人民義勇軍を編成し、その指揮を執りました。同党はソビエト連邦の赤軍に支援を要請し、ともに駐屯していた中国兵を攻撃し、キャフタを占領。その後、クーロンの白軍を赤軍と共に撃滅しました。1921年7月には、ボグド・ハーンを戴いた人民政府が樹立され、スフバートルは全軍司令官に就任、1922年12月まで国防大臣を兼任しました。この間、モンゴルの独立と国家建設のために尽力しました。

急逝と評価

スフバートルは、1923年2月に急逝しました。その死因は、病死とも暗殺とも言われていますが、詳細は不明です。

社会主義時代には、その軍事的功績と革命初期の死が重なり、チョイバルサンと共に人民革命の功労者として高く評価されました。社会主義崩壊後も、「近代モンゴル軍の父」として英雄視され、モンゴルの紙幣トゥグルグには、チンギス・カンとともに彼の肖像が用いられています。また、共産主義者としてよりは民族主義者として独立運動を推進したとの評価もあります。

しかし、実際には、1921年9月から1925年まで軍の最高指導者の地位にいたのはブリヤート人のエルベクドルジ・リンチノであり、スフバートルが軍の最高指導者であったのは1921年3月から9月までの半年間に過ぎません。リンチノは汎モンゴル主義の主唱者で、1921年のモンゴル革命において思想、実務の両面で重要な役割を果たしました。

遺産

ウランバートルの中心部にあるスフバートル広場には、彼の騎馬像が今も残されています。2005年の政府宮殿の改装の際に、スフバートル廟は取り壊されましたが、彼の遺体は2004年に火葬されました。また、モンゴル北部にあるセレンゲ県の県都は、彼の名をとってスフバートルと名付けられています。

さらに、日本の防衛大学校にあたるモンゴル国防大学は、1921年9月にスフバートルが創設したことから、彼の名前が長く付けられていました。モンゴル海軍に所属していた唯一の艦艇にも、彼の名前が付けられていました。

スフバートルの生涯は、モンゴルが独立を達成し、近代国家として歩む上で重要な足跡を残しました。彼の功績は、現在もモンゴル国民に深く尊敬され、語り継がれています。

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