ダモクレス族

ダモクレス族とは、太陽系を周回する天体のうち、彗星に似た非常に細長い楕円軌道を持つものの、彗星に見られるようなコマや尾といった現象を伴わない小惑星の分類名です。これらの天体は、長周期彗星の代表例であるハレー彗星のような軌道を持つことが特徴です。一般的に、オールトの雲と呼ばれる太陽系の外縁領域からやってきたと考えられています。また、ダモクレス族に属する小惑星の多くは、太陽系の惑星が公転する方向とは逆向きに公転する、逆行小惑星であることが知られています。

中村彰正氏は、ダモクレス族の小惑星を特定する基準として、「近日点距離が5.2天文単位以下、軌道長半径が8.0天文単位以上、離心率が0.75以上」または「軌道傾斜角が90度以上」という条件を提示しました。また、デビッド・C・ジューイット氏のウェブサイトでもダモクレス族のリストが公開されており、それぞれ30個ほどの天体が掲載されています。しかし、これらのリストに掲載されている天体は完全に一致しているわけではありません。

一方で、[ジェット推進研究所]の太陽系小天体・準惑星データベースには、ダモクレス族という分類は存在しません。JPLのデータベースでは、ダモクレス族に該当する天体は、ケンタウルス族や太陽系外縁天体、あるいはアポロ群に分類されています。

ダモクレス族の小惑星は、「地球付近を通過する長周期彗星のような」と説明されることもありますが、実際には、リストに掲載されている天体の大部分は、近日点が小惑星帯に匹敵する程度で、地球近傍小惑星には該当しません。また、軌道傾斜角が大きい一方で、離心率が比較的小さい天体も含まれているなど、軌道の性質にはばらつきがあります。

太陽から遠く離れている間は、彗星は小惑星と外見上区別がつかないため、小惑星としてダモクレス族に分類されていた天体が、彗星に分類変更された例があります。例えば、小惑星として登録されていた2001 OG108は、太陽に近づくにつれて彗星活動を始めたため、彗星C/2001 OG108（LONEOS彗星）として再分類されました。このように、ダモクレス族の天体は、太陽に近づくと彗星としての活動を示す可能性があるため、その分類は非常に難しい場合があります。

主なダモクレス族小惑星

(5335) ダモクレス (Damocles): ダモクレス族の最初の発見天体。

(20461) ダイオメデス (Diomedes)

(65407) 2002 RP120

(127546) 2002 XU93

(145480) 2005 TB190

関連項目

彗星

彗星・小惑星遷移天体

ケンタウルス族 (小惑星)

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