ダラス航空ショー空中衝突事故

ダラス航空ショー空中衝突事故

2022年11月12日、アメリカ・テキサス州ダラスのエグゼクティブ空港で開催されていた航空ショー「ウイングス・オーバー・ダラス」で、歴史的な航空機同士が空中衝突し、墜落炎上するという痛ましい事故が発生しました。この事故により、2機の航空機に乗っていた6人全員が犠牲となりました。

事故の概要

事故が発生したのは、航空ショーの午後のプログラム中でした。衝突したのは、第二次世界大戦時代に製造された2機の航空機で、ボーイングB-17「フライングフォートレス」爆撃機と、ベルP-63「キングコブラ」戦闘機でした。

B-17「フライングフォートレス」：愛称「テキサス・レイダーズ」、機体記号N7227C。1945年初飛行の機体で、アメリカン・エアパワー・ヘリテージ・フライング・ミュージアムが動態保存していました。
P-63「キングコブラ」：機体記号N6763。B-17と同じく、アメリカン・エアパワー・ヘリテージ・フライング・ミュージアムが運用していました。P-63F型は2機しか製造されておらず、事故機はそのうちの1機でした。

事故の背景

事故が発生した航空ショー「ウイングス・オーバー・ダラス」は、退役軍人の日を記念して開催され、歴史的な航空機の保存を目的とした非営利団体「記念空軍」が主催しました。当日は4,000人以上の観客が集まっていました。

事故当時、2機の航空機はアクロバット飛行ではなく、編隊を組んで飛行する「パレード」形式の展示飛行を行っていました。

事故の経緯

事故は、現地時間13時22分頃に発生しました。

B-17は5機の爆撃機編隊の先導機であり、P-63は3機の戦闘機編隊の最後尾を飛行していました。展示飛行中、P-63は旋回しながらB-17に接近し、左後方から接触しました。衝突の際、P-63は粉々になり、B-17は胴体が切断されました。両機はそのまま墜落し、炎上しました。

目撃証言やデータによると、以下のような状況が事故につながったと考えられています。

飛行指示: 司令官は、爆撃機編隊に観客席から1,000フィート離れて平行に飛行するように指示しました。同時に、戦闘機編隊には500フィート離れて平行に、トレイル編隊で飛行するよう指示していました。
誤認の可能性: P-63のパイロットが、B-17の後ろにいたB-24爆撃機を先導機と誤認した可能性が指摘されています。また、P-63のパイロットが、爆撃機編隊の飛行針路からすでに回避したと誤認し、接近するB-17を視認できなかった可能性も指摘されています。
P-63の飛行経路: P-63は滑走路の進入方向へと高速で降下しながらバンクターンを行っていました。

事故調査

事故発生後、国家運輸安全委員会（NTSB）と連邦航空局（FAA）が共同で調査を開始しました。

機体の回収: P-63の残骸は「安全な場所」に移動されましたが、B-17の残骸は雨の影響で保全が遅れました。
ブラックボックス: 両機ともブラックボックスは装備されていませんでしたが、B-17の電子飛行ディスプレイ（EFIS）と、P-63の衛星航法装置（SNS）が回収されました。
NTSBの一次報告: NTSBは、飛行前や飛行中における高度の衝突解消の議論が欠如していたこと、P-63の衛星航法装置が何も記録していなかったことを指摘しました。また、P-63のコックピットからの視認性が損なわれていたことも示されました。
* パイロットへの情報不足: ATCとパイロットの会話内容から、パイロットに対して高度に関する情報が全く与えられていなかったことが明らかになりました。

事故への反応

ダラス郡の判事やダラス市長は、この事故を「恐ろしい悲劇」と表現し、犠牲者と家族への哀悼の意を表しました。航空ショーを主催した記念空軍の会長は、このような空中衝突は「非常にまれ」であると述べました。

まとめ

ダラス航空ショーでの空中衝突事故は、歴史的な航空機がもたらす感動と同時に、安全管理の重要性を改めて認識させる出来事となりました。この悲劇を教訓として、今後の航空ショーにおける安全対策が徹底されることを願います。

この事故は、多くの人々に深い悲しみと衝撃を与えましたが、同時に、航空史における貴重な機体の保存と安全運航のバランスについて、深く考えさせられる機会となりました。

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