ダヴィド・イーゴレヴィチ

ダヴィド・イーゴレヴィチ：動乱の時代のヴォルィーニ公

ダヴィド・イーゴレヴィチ（1050年代後半 - 1112年5月25日）は、イーゴリ・ヤロスラヴィチを父に持つ、リューリク朝の公です。トムタラカニ公、ヴォルィーニ公、ルーツク公、ドロゴブージ公を歴任し、11世紀末のルーシにおける諸公の内紛に深く関与しました。

生涯

1050年代後半に生まれたと推測されるダヴィドは、父の早逝後、イズゴイ・クニャージ（領地を持たない公）としてヤロポルクのもとで過ごしました。1081年、同じくイズゴイ・クニャージであったヴォロダリと共にトムタラカニへ向かい、キエフ大公フセヴォロドの代官を追放してトムタラカニ公となります。しかし、2年後にはオレグに追放されます。

その後、ダヴィドは従士隊を集め、ドニエプル川河口でビザンツ帝国への交易路を封鎖し、勢力を拡大しようと試みました。1084年には、キエフ大公フセヴォロドからヴォルィーニ公国の都市ドロゴブージュを分領地として与えられます。1086年、ヴォルィーニのヤロポルクが亡くなると、ダヴィドはヴォルィーニ公国を手に入れました。また、スヴャトポルクと協定を結び、ガーリチ地方のペレムィシュリ公国とテレボヴリ公国（ヴォロダリとヴァシリコの兄弟が領有）の奪取を試みます。

1097年のリューベチ諸公会議では、ダヴィドのヴォルィーニ公国領有が承認されました。しかし、この会議でテレボヴリ公国領有を認められていたヴァシリコを、ダヴィドは会議の決定に背き捕らえ、目をえぐります。この暴挙はルーシ全土に衝撃を与え、政情不安を招きました。ブジスクにおいてヴァシリコの兄弟ヴォロダリの軍勢に包囲されたダヴィドは、ヴァシリコの解放を余儀なくされます。

一時ポーランドへ逃亡したダヴィドでしたが、後にヴォルィーニへ帰還します。しかし、キエフ大公スヴャトポルクにヴォルィーニを包囲され、ヴォルィーニを譲渡することとなりました。その後もダヴィドはヴォルィーニを巡る闘争を続け、1099年にはポロヴェツ族のハン・ボニャークを味方に引き入れ、ヴャグル川の戦いで勝利し、ヴォルィーニとルーツクを奪還します。しかし、1100年のウヴェティチ諸公会議で、ヴァシリコの目をえぐったことを理由に、その所有権を剥奪されました。

ヴォルィーニの代替地として、ヴォルィーニ地方の都市であるブジスク、オストログ、ヅブノ、チャルトルィンスク、そして後にドロゴブージュを得て、ブジスクを所領の首都としました。1112年5月25日、ダヴィドはドロゴブージュで亡くなりました。1937年から翌年にかけて、ダヴィド・ハラドクで発見されたクニャージの墓の遺骨は、ダヴィドのものであると考えられています。

ダヴィド・イーゴレヴィチは、その果敢な行動と領土を巡る執念により、ルーシの歴史に名を残しました。彼の生涯は、11世紀末のルーシの政治情勢と諸公の権力闘争を色濃く反映しています。

参考文献

Гайдай Л. Історія України в особах, термінах, назвах і поняттях.- Луцьк: Вежа, 2000.
Довідник з історії України. За ред. І. Підкови та Р. Шуста.- К.: Генеза, 1993.
* А. В. Экземплярский Давид Игоревич // ブロックハウス・エフロン百科事典 - СПб., 1890—1907.

もう一度検索