ターズ

ターズ民族の概要

ターズ（ロシア語: Тазы、英語: Taz）は、ロシア連邦沿海州南部に居住する少数民族です。この民族は主に18世紀頃にツングース系の民族（特にウデヘ）の一部が漢民族化した結果として成立しました。ターズは、自身の文化や習俗に強い漢民族の影響を受けつつも、独自のアイデンティティを保持しています。彼らはターズ語と呼ばれる漢語の方言を話しますが、漢字を読むことはほとんどできず、そのため漢民族とは異なる文化的背景を持っています。「ターズ」という名称は、漢民族がアムール川流域のツングース系民族を指して呼んだ「韃子（ターズ）」に由来しています。

居住地域

ターズは主に沿海州南部、特にオリギンスキー地区のミハイロフカ村を中心に居住しています。1979年の調査によると、ターズ人の中で174人がこの地域に、内115人がミハイロフカ村に住んでいます。この地域は、ターズの文化や伝統が色濃く残る場所となっています。

歴史的背景

ターズの歴史は、ロシア人が沿海州に進出する頃まで遡ります。この地域では清朝の支配を受けており、漢民族の文化や言語が広がっていました。先住民族の多くは、自身の母語であるウデヘ語やナナイ語だけでなく、漢語も話すことができました。特に沿海州南部では、漢民族の影響が非常に強かったため、一部の住民は母語を失い、漢民族の言語や文化を受け入れるようになりました。

19世紀半ばには、ツングース系のウデヘやナナイが混ざり合った比較的新しい民族が形成され、これが現代のターズの祖先と考えられています。ターズは漢民族の文化を受け入れながらも、自らの独自性を失うことはなく、残された伝統的な慣習も多く存在します。女性が農業や狩猟に従事することや、生肉や魚を生のまま食べるなど、北方民族の影響が見受けられるのも特徴です。

「韃子」という言葉は、元々モンゴルの韃靼人を指す呼称であり、次第に国境外の異民族全般を意味するようになりました。そして、この名称は19世紀に入ると、沿海州に移住してきた貧農や商人といった漢民族を含む広範な人々を指す呼称へと変化していきました。

1860年の北京条約によってウスリー川以東がロシア帝国に編入されると、先住民族に対し、ロシア人が彼らを漢民族のように「ターズ」と呼ぶようになりました。この時代のターズは、ウデヘやオロチを区別せず、漢語のみを使用する集団として認識されていました。V.K.アルセーニエフは、調査を通じてウデヘとターズを区別し、ターズが漢民族化したウデヘであると位置づけましたが、同時にターズを独立した民族と看做すべきだと主張しました。このため、ターズという名称は先住民族由来でありながらも漢民族化された集団を指す特別な用語として定着しました。

1930年代、ソ連での外国人追放の影響を受け、ターズも漢民族として追放を受けることになりました。しかし、アルセーニエフの考え方のおかげで、一部のターズはこれを免れて生き延びました。現代では、ターズは周辺のウデヘや他の民族に比べて言語の保持が高く、彼ら自身の語を「自分たちの言語」として意識する傾向があります。

まとめ

ターズは、歴史的な背景や周辺民族との関係の中で独自の文化を築いてきた民族です。彼らの文化や習俗、言語の保持運動は、今なお地域社会の中で重要な役割を果たしています。

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