チェロソナタ (グリーグ)

グリーグ チェロソナタ イ短調 作品36

エドヴァルド・グリーグが作曲した唯一のチェロソナタであり、彼の作品の中でも重要な位置を占めるのが、このイ短調作品36です。1883年に作曲され、グリーグがチェロとピアノのために書いた2つの作品のうちの1つです。このソナタは、グリーグの3歳年上の兄であり、アマチュアチェリストであったヨーンのために作曲されました。

作曲の背景

グリーグは、兄ヨーンが音楽を愛好していたことから、彼が演奏することを想定してこのソナタを作曲したとされています。ヨーンはグリーグと同じくライプツィヒ音楽院で学びましたが、音楽の道には進まず、他の職業に就きました。しかし、アマチュアチェリストとして音楽を楽しみ、グリーグの創作活動を支える存在であったと考えられます。

楽曲の特徴

このチェロソナタは、グリーグの弦楽四重奏曲ト短調作品27から約5年後に作曲されましたが、弦楽四重奏曲のような全体を貫く統一性は見られません。しかし、時折現れる情熱的で大胆な音楽は、弦楽四重奏曲に劣らないほどの魅力を放っています。特に、第2楽章には、劇音楽『十字軍の兵士シグール』作品22の中の「忠誠行進曲」が流用されており、聴きどころの一つとなっています。

構成

全3楽章で構成されており、演奏時間は約30分です。

第1楽章 アレグロ・アジタート
イ短調、2分の2拍子、ソナタ形式。
激しい感情が込められた、劇的な楽章です。

第2楽章 アンダンテ・モルト・トランクィロ
ヘ長調、4分の4拍子、自由な形式。
穏やかで美しい旋律が特徴的な楽章で、『十字軍の兵士シグール』からの流用が用いられています。

第3楽章 アレグロ―アレグロ・モルト・エ・マルカート
イ短調→イ長調、4分の2拍子、序奏付きのソナタ形式。
力強く、情熱的なフィナーレを飾る楽章です。

間奏曲 イ短調 EG.115

チェロソナタよりも20年近く前の1867年頃に作曲されたチェロとピアノのための間奏曲イ短調 EG.115も、チェロソナタと同様にヨーンのために作曲されたと考えられています。この作品は、あまり技巧に走らず、チェロの歌うような性格を生かした穏やかな作品で、演奏時間は約3分です。グリーグは、この間奏曲よりも前に、ヨーンに『マズルカ』という作品を献呈したと伝えられていますが、楽譜が紛失したため、現在は確認されていません。

参考文献

グリーグ:『チェロソナタ/弦楽四重奏曲』（フィリップス、廃盤）

外部リンク

* チェロソナタ作品36の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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