チェロソナタ (プーランク)

チェロとピアノのためのソナタ FP 143

フランシス・プーランク（Francis Poulenc）が1948年に完成させた《チェロとピアノのためのソナタ》（Sonate pour violoncelle et piano） FP 143は、作曲者の円熟期に位置する作品です。このソナタは、フランスの著名なチェリスト、ピエール・フルニエに献呈されています。プーランクはチェロという楽器の扱いに必ずしも慣れていなかったため、フルニエがチェロ・パートの技術的な側面について助言を与えました。楽譜はパリのウジェル社から出版されています。

作曲の背景と過程

このソナタの構想は、1940年の第二次世界大戦勃発という困難な時期に遡ります。フランスで国民の動員が布告された1939年8月、プーランクはノワゼで他の作品（六重奏曲の改訂など）に取り組んでいました。1940年6月にはボルドーでの任務が命じられましたが、カオールでの短い滞在中に作曲のアイディアを練っていたようです。同年7月に休戦協定により軍務を離れた後、ブリーヴ＝ラ＝ガイヤルドで友人と合流し、そこでこのチェロソナタを含むいくつかの作品（《小象ババールの物語》、《典型的動物》など）のスケッチを行いました。

しかし、ソナタの完成までには長い時間を要しました。プーランクは大戦終結後にようやく大作カンタータ《人間の顔》を作曲し、このチェロソナタが完成したのは、1948年末に歌曲集《カリグラム》（ギヨーム・アポリネールの同名作品に基づく）を書き終えた後のことでした。1940年にはフルニエの求めに応じて一度下書きを再開し、ソナタの作業に戻ってはいましたが、当時の彼はチェロだけでなくヴァイオリンにも創作意欲を刺激されなかったと述べています。さらに、先行する《ヴァイオリンソナタ》が一部の評論家から「説得力がない」「凡庸」と評されるなど、作曲者にとって必ずしも成功と言えない状況でした。こうした要因もあり、チェロソナタの楽譜は何年も作曲者の手元に置かれたままとなり、最終的に完成に至ったのは最初のスケッチから8年後の1948年でした。

初演は完成の翌年、1949年5月18日にパリのサル・ガヴォーで行われました。ピアノをプーランク自身が、チェロを献呈相手であるピエール・フルニエが担当しました。

評価

このソナタに対する評価は様々でした。「楽しい以上のものではない」といった厳しい意見もありましたが、概してその出来栄えから、ヴァイオリンソナタよりは好意的に受け止められていました。著作家のルノー・マシャールは、第2楽章「カヴァティーヌ」を「厳しくも美しい」と評し、終楽章を「大きく成功している」としながらも、第1楽章の「アレグロ」には性格が欠けていると指摘しています。一方で、伝記作家のアンリ・エルは、第2楽章を「非常に愛らしい」としつつも、作品全体としては「面白みはほとんどない」と限定的な評価を下しました。対照的に、音楽学者のアデライード・ド・プラースは、フェイヤール社から出版された《Guide de la musique chambre》に寄せたプーランクに関する記事の中で、このソナタとヴァイオリンソナタをプーランク作品の中でも「指折りの良質なページ」と称賛しています。

また、このソナタの様式について、ヴァンサン・ダンディやアルベリク・マニャールといった作曲家の作品との類似性を指摘する声もあります。曲中に現れるいくつかの主題は、作曲者が本作と同時期にスケッチを進め完成させたバレエ音楽《典型的動物》を思い起こさせるところがあります。

楽曲構成

ソナタは以下の4つの楽章で構成されています。

1. Allegro - Tempo di Marcia
2. Cavatine
3. Ballabile
4. Finale

どの楽章も三部形式を基本としており、対照的な中間部を持っています。

（参考文献・出典は割愛）

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