チェロ協奏曲第1番 (カバレフスキー)

チェロ協奏曲第1番 ト短調 作品49

ドミトリー・カバレフスキー（Dmitry Kabalevsky, 1904-1987）が1949年に作曲したチェロ協奏曲第1番 ト短調 作品49は、ソビエト連邦の若い世代に向けて書かれた一連の協奏曲3部作の第2作にあたる作品です。この3部作には、他にヴァイオリン協奏曲（第1作）、ピアノ協奏曲第3番（第3作）が含まれます。

作曲背景

カバレフスキーは、1948年にヴァイオリン協奏曲が初演された後、直ちにこのチェロ協奏曲の作曲に取りかかりました。集中的な作曲活動を経て、翌1949年には作品を完成させています。これは、ソビエトの若い音楽家たちのために、彼らが演奏しやすい、現代的でありながらも親しみやすい協奏曲を提供するというカバレフスキーの意図を反映したものです。

初演

本作の初演は、完成から間もない1949年3月14日にモスクワで行われました。ソビエトを代表するチェリストの一人であるスヴャトスラフ・クヌシェヴィツキーが独奏を務め、ミハイル・テリアン指揮、モスクワ音楽院学生管弦楽団の演奏によって初披露されました。

楽器編成

この協奏曲の編成は、独奏チェロと、以下のオーケストラによって構成されます。

木管楽器: フルート1、オーボエ1、クラリネット1、ファゴット1
金管楽器: ホルン2、トランペット1、トロンボーン1
打楽器: ティンパニ、小太鼓、シンバル、大太鼓
弦五部: ヴァイオリンI, II、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

全体として、比較的コンパクトなオーケストラが用いられており、これは同時期のカバレフスキーの協奏曲に共通する特徴です。

作品の特徴

カバレフスキーの「青年に捧げる」3部作の中で、ヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲第3番が長調で書かれ、明るく快活な性格を持っているのに対し、チェロ協奏曲第1番は唯一ト短調を採用しており、より内省的で叙情的な雰囲気をまとっています。これは、3曲が続けて演奏される際に、聴衆に異なる感情の対比を与える効果を狙ったものと考えられます。作品全体の演奏時間は約19分と、カバレフスキーの協奏曲の中では標準的な、演奏しやすい長さとなっています。管弦楽パートは、しばしば独奏チェロの旋律を引き立てるために控えめに響き、独奏パートが明確に前面に出るよう配慮されています。

楽章構成

作品は典型的な3楽章構成をとっています。

第1楽章 Allegro

ソナタ形式で書かれた楽章です。弦楽器のピッツィカートによる軽快な伴奏に乗って、独奏チェロが8分の6拍子による躍動的な第1主題を提示します。この主題はクラリネットに引き継がれて展開された後、8分の9拍子と8分の6拍子が入り混じるリズムの中で、やや歌謡的な性格を持つ第2主題が現れます。展開部では、独奏チェロによって新たな、より伸びやかな主題も導入され、音楽的な広がりを見せます。再現部は、管弦楽が第2主題を奏でる形で始まり、静かに収束して楽章を閉じます。

第2楽章 Largo molto espressivo

「非常に表情豊かなラルゴ」と指定された、三部形式による緩徐楽章です。この楽章では、二つのロシアの民謡旋律が主要な素材として用いられています。まず、楽章冒頭で独奏チェロが深く情感を込めて奏でるのは、ロシア民謡「何故お嫁に行く約束をしたの」の旋律です。中間部では、対照的にホルンがベラルーシ民謡「鶉」の主題を提示し、素朴な雰囲気をもたらします。短いながらも印象的な第3部の前に、独奏チェロのための華麗なカデンツァが置かれ、独奏者の表現力が光ります。

第3楽章 Allegretto

ロンドソナタ形式による終楽章です。クラリネットによる短い導入句に続いて、独奏チェロがロシア民謡に基づいた、快活でリズミカルな第1主題を提示します。この主題はいくつかの変奏を経て発展します。二つの変奏の後、叙情的で歌謡的な性格を持つ第2主題が現れますが、すぐに第1主題が戻り、さらなる変奏が展開されます。再現部は、第1楽章と同様に管弦楽による第2主題の提示から始まり、最後は第1主題に基づいた力強いコーダで締めくくられ、作品全体が活気に満ちたフィナーレを迎えます。

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