チオペンタール

チオペンタール（Thiopental）とは

チオペンタールは、バルビツール酸系に属する麻酔薬の一つであり、主に静脈注射を通じて使用されます。この薬は、鎮静及び催眠の効果を示し、特に全身麻酔の導入において広く用いられています。日本では「ラボナール」という商品名で知られ、一般名としてはチオペントンとも呼ばれることがあります。

作用機序

チオペンタールの主要な作用機序は、GABAA受容体への結合によるGABAの作用の強化です。この結果、神経細胞に過分極を引き起こし、脳幹の網様体賦活系の抑制が麻酔効果につながります。脂溶性が高いため、迅速に血液脳関門を通過し、効果を短時間で発揮することが特徴です。また、繰り返し投与されることで脂肪組織に蓄積され、長期間にわたって麻酔を持続させることもあるため、使用する際には注意が必要です。

適応

チオペンタールは、以下のような状況での使用が推奨されています。

• - 全身麻酔の導入
• - 局所麻酔薬や吸入麻酔薬との併用
• - 電撃療法など精神科医療における麻酔
• - 精神神経科における診断目的の麻酔（麻酔インタビュー）

他のバルビツール酸系薬剤、例えばチアミラールと比較すると、外見や適応、力価、作用時間についてやや類似点がありますが、特に「麻酔インタビュー」という適応においては、チオペンタールが特有の役割を果たします。

副作用

チオペンタールは、筋肉内注射を行う場合には注意が必要です。この薬はアルカリ性（pH 10 - 11）であり、筋注部位において壊死や局所的な障害を引き起こす可能性があります。したがって、患者にとっての利点がそのリスクを上回る場合にのみ使用されるべきです。

禁忌

チオペンタールの使用には禁忌が存在します。特に、ヒスタミンの遊離作用があるため、喘息のある患者には危険を伴うと言われています。重度の気管支喘息の患者には、この薬の使用を避けるのが望ましいとされています。

製造中止騒動

1997年、田辺製薬は経済的理由からラボナールの製造中止を発表しました。この発表に対して麻酔科の医師らは反発し、日本麻酔科学会も製造中止の撤回を求める要望書を提出しました。その結果、田辺製薬は製造中止を撤回し、薬価も引き上げることで再度流通が確保されることとなりました。

アメリカでの死刑執行

アメリカにおいては、チオペンタールは死刑執行時に意識を失わせるための薬物として使用されていました。しかし、2009年に製造が停止され、その後はチオペンタールを用いることが困難になりました。このため、ペントバルビタールなど他の薬物が代替として使用されるようになり、物議を醸しています。

チオペンタールは、医療現場において重要な役割を果たしますが、その使用においては慎重な判断が求められます。

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