チオ硫酸塩

チオ硫酸塩の概要

チオ硫酸塩、英語ではthiosulfateと呼ばれるこの化合物は、硫黄を基にしたオキソアニオンで、具体的にはチオ硫酸イオン（S2O32-）を含む塩です。接頭辞に含まれる「チオ」という表現は、基本的な硫酸イオンの酸素原子の一部が硫黄原子に置き換わったことを示しています。チオ硫酸塩は自然界に存在し、特定の生化学的プロセスにより生成されます。
この化合物は、銀を含む鉱物の精錬、皮革製品の製造、繊維への染料の定着など、さまざまな工業的用途に利用されています。また、チオ硫酸ナトリウム（しばしば「ハイポ」と呼ばれる）は、特に写真撮影の分野で重要な役割を果たし、白黒ネガフィルムの定着剤として使用されてきました。近年では、より高速で反応するチオ硫酸アンモニウムが「迅速定着剤」として登場しています。
さらに、特定のバクテリアはこのチオ硫酸塩を代謝する能力を持っています。

チオ硫酸塩の生成と反応

チオ硫酸塩は、亜硫酸塩と単体の硫黄とが反応することで生成されます。この反応により、チオ硫酸塩は生成されますが、一方で酸性溶液内では不安定であることが知られています。この不安定性は、反応によって二酸化硫黄と硫黄に分解されてしまうためです。具体的には、次のような化学反応が起こります：

S2O32− (aq) + 2 H+ (aq) → SO2 (g) + S (s) + H2O

この反応によって生成された硫黄の水懸濁液は、物理学的な実験において光のレイリー散乱を示すために使われることがあります。白色光を上から当てると青い光が見え、一方で横から当てるとオレンジ色の光を観察できます。これは、昼の空と夕方の空における色の違いに類似したメカニズムによるものです。

チオ硫酸塩はハロゲンと反応する際、その反応性が異なります。これは、ハロゲンの酸化力が周期的に減少するためであり、次のような反応式が示されます：

• - S2O32− (aq) + 2 Cl2 (aq) + 5 H2O (l) → 2 SO42− (aq) + 4 Cl− (aq) + 10 H+ (aq)
• - S2O32− (aq) + 2 Br2 (aq) + 5 H2O (l) → 2 SO42− (aq) + 4 Br− (aq) + 10 H+ (aq)
• - 2 S2O32− (aq) + I2 (aq) → S4O62− (aq) + 2 I− (aq)

このように、チオ硫酸塩は金属と非常に早く反応し、特に鋼やステンレス鋼に対しては腐食を引き起こす要因となります。ステンレス鋼の孔食に対しての耐性を高めるために、モリブデンの添加が推奨される場合もあります。

チオ硫酸塩はより広範な化学的過程の中で生成されることがあり、不完全な硫化物の酸化や硫酸塩の部分的な還元などが含まれます。この化合物が自然界で見られることは非常に限られており、特にシドピーターサイトと呼ばれる稀な鉱物の中にその存在が確認されています。また、最近では他の鉱物内でのチオ硫酸塩の存在が議論されていることもあります。

命名法と関連項目

チオ硫酸塩のIUPAC命名法における正式な名前は、トリオキシドスルフィド硫酸（2-）であり、これに対応する酸の名称はジヒドロキシドオキシドスルフィド硫黄です。このように、化学名はその成分の構造を反映しています。

関連項目として、亜硫酸塩やテトラチオン酸塩、チオ硫酸鉄(II)などがあります。これらの化合物は全て、化学的な反応や工業用途において重要な役割を果たしています。

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