チキン・リトル

チキン・リトル：寓話から生まれた二つのアニメ映画

「チキン・リトル」は、イギリス発祥の寓話です。頭に木の実が落ちてきたヒヨコが、空が落ちてくると勘違いする物語で、悲観的な性格の人を指す慣用句としても広く用いられています。「ヘニー・ペニー」という別名でも知られています。ディズニーは、この有名な寓話を題材に、1943年と2005年の二度に渡りアニメ映画を制作しました。本稿では、両作品の魅力と違いについて詳しく解説します。

1943年版：短編アニメーションのダークな結末

1943年版のチキン・リトルは、ウォルト・ディズニー・プロダクション制作の短編アニメーションです。アメリカでは1943年12月17日に公開されましたが、日本では劇場公開されず、ビデオおよびレーザーディスクで『きつねとヒヨコ』という邦題で発売されました。

この作品では、農場で平和に暮らすニワトリたちの前に、腹を空かせたキツネのフォクシー・ロクシーが現れます。柵を乗り越えることができず、農場主の銃を恐れたフォクシーは、心理学の本を参考にニワトリたちを騙す策略を立てます。

フォクシーは、チキン・リトルをターゲットに選び、「空が落ちてくる」と嘘をつき、パニックに陥らせます。冷静なリーダー格のコッキー・ロッキーがフォクシーの嘘を見破り、ニワトリたちを落ち着かせますが、フォクシーは今度はコッキー・ロッキーに関する嘘の噂を流し、彼への信頼を失墜させます。

そして、フォクシーはチキン・リトルをリーダーに仕立て上げ、「洞穴へ逃げろ」と唆します。チキン・リトルの指示に従い、洞穴に逃げ込んだニワトリたちは、待ち伏せしていたフォクシーに捕食されてしまうという、予想外の結末を迎えます。この衝撃的なラストは、ナレーターの「これでおしまいかい？」という問いかけと、フォクシーの皮肉なセリフによってさらに強調されています。

スタッフには、ウォルト・ディズニーを始め、クライド・ジェロニミ監督、ウォード・キンボール、ミルト・カールといったディズニーアニメーション黄金期の巨匠たちの名前が並びます。また、フランク・グラハムがナレーションを含む全てのキャラクターの声を演じている点も特筆に値します。

2005年版：長編アニメーションの冒険と友情

2005年版は、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ制作の長編アニメーション映画です。アメリカでは2005年11月4日、日本では同年12月23日に公開され、一部劇場では3D版も上映されました。日本のディズニー長編アニメーション映画としては、最後のVHS版発売作品でもあります。

この作品では、チキン・リトルは野球選手の父を持つ小さなニワトリの少年として描かれています。彼はいつも大きな眼鏡をかけており、ヒーローになることを夢見ています。アヒル、ブタ、魚といった個性的な仲間たちと共に、様々な困難に立ち向かいます。

ある日、チキン・リトルが「空が落ちてくる」と騒いだことから街は大混乱に陥りますが、肝心の証拠は見つかりません。嘘つき呼ばわりされ、父にも信じてもらえず落ち込むチキン・リトルですが、少年野球の試合で奇跡の逆転サヨナラランニングホームランを打ち、汚名を返上する機会を得ます。

しかし、再び空から落ちてきた物体に友達の魚がさらわれ、UFOや宇宙人と遭遇するなど、予想外の冒険が展開していきます。チキン・リトルとその仲間たちは、友情を深めながら、数々の困難を乗り越え、成長していく姿が描かれています。

スタッフにはマーク・ディンダル監督、ジョン・デブニーによる音楽、そしてILMによるVFXなど、豪華な顔ぶれが揃っています。日本語吹き替え版では、チキン・リトルの父親役を中村雅俊が演じたことが話題となりました。

ゲーム化

両作品とも、PlayStation 2、ニンテンドーゲームキューブ、ゲームボーイアドバンス、ニンテンドーDSなど、様々なゲーム機向けにゲームソフトが発売されました。これらのゲームでは、映画の世界観を再現した冒険や、オリジナルのストーリーが楽しめます。

まとめ

1943年版と2005年版の「チキン・リトル」は、同じ題材でありながら、全く異なる魅力を持つ作品です。短編のダークな寓話と、長編の冒険物語。どちらの作品も、それぞれの時代背景や制作技術を反映した、ディズニーアニメーションの粋が凝縮されています。

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