チクレットキーボード

チクレットキーボードとは

チクレットキーボードは、小さなゴム製のキーで構成されたキーパッドを指す俗称です。キーの形状がチューインガムの「チクレット」に似ていることが名前の由来となっています。

歴史

メーカー側は、チクレットキーボードの製造コストの低さに注目し、初期のZX Spectrumなどのホームコンピュータ、ポータブルコンピュータ、ラップトップコンピュータなどに採用されました。メンブレンキーボードと比較して操作性は改善されたものの、ユーザーからの評価は高くありませんでした。1980年代中頃には、小型電卓や安価なPDA、リモコンといったローエンドの電子機器での採用が中心となりました。

海外での呼称

チクレットキーボードという名称は、世界共通ではありません。例えば、イギリスではキーの感触から「dead-flesh keyboard（死肉キーボード）」、または「rubber-keyed keyboard（ゴムのキーのキーボード）」と呼ばれます。また、ノルウェーではキーが消しゴムに似ていることから、「eraser keyboard（消しゴムキーボード）」と呼ばれることが一般的です。

動作原理

チクレットキーボードの基本的な構造は、メンブレンキーボードと同様です。キーの下にある三層構造が、キーの押下を検出します。

1. 一番下の層には、キーごとに電気回路が配置されています。
2. 上下の層は絶縁体のスペーサーで隔てられており、通常時は電流が流れません。
3. キーを押すと上の層が下の層と接触し、電流が流れることでキーの押下が検知されます。

メンブレンキーボードとの違いは、キーの上に成型されたゴム製のキーが配置されている点です。キーが押されるとゴムが折れ曲がる構造や、キーとシートの接点を薄くするなどの工夫により、タクタイルフィードバックが得られるようになっています。

構造のバリエーション

メンブレンの上の層とスペーサーの層を省略し、キーの下部を導電体で覆う構造も存在します。この場合、キーが押されるとキー下部の導電体がメンブレンの下の層の回路と接触し、回路が形成されます。

現代のキーボードへの影響

現代のキーボードで主流となっているドーム型スイッチキーボードは、チクレットキーボードと類似した構造を持っています。ゴム製のキーをラバードームに、その上にプラスチック製のキーを配置することで、ドーム型スイッチキーボードとなります。

チクレットキーボード搭載機種の例

Cambridge Z88
Commodore PET 2001
Commodore 116
IBM PCjr
Jupiter ACE
Mattel Aquarius
Microdigital TK 90X
Multitech Microprofessor I (MPF 1)とMPF II
OLPC XO-1
Oric 1
松下通信工業 JR-100
松下通信工業 JR-200
セガ・エンタープライゼス SC-3000
Sinclair ZX Spectrum 16/48K
Spectravideo SV-318
Tandy TRS-80 Color Computer I
Tandy TRS-80 MC-10と、そのフランス版のMatra Alice
テキサス・インスツルメンツ TI-99/4
Timex Sinclair 1500
Timex Sinclair 2068
VTech Laser 200
初期のMSXコンピュータの一部 (Philips VG-8010など)
* ペリックス PERIBOARD-213U

近年では、MacBookシリーズやマイクロソフトのArc Keyboard、Eee PCの一部モデルなど、チクレットキーボード風の外観を持つキーボードが増えています。ただし、これらのキーボードはキーが独立して配置されているものの、内部構造はパンタグラフキーボードであることが多く、アイソレーションキーボードと呼ばれます。

チクレットキーボードは、その独特な形状と構造から、キーボードの歴史において重要な位置を占めています。

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