チボダス植物園

チボダス植物園

概要

インドネシアの西ジャワ州、チボダス地方、標高1300メートルから1425メートルのゲデ山山麓に広がる広大な植物園、チボダス植物園（Kebun Raya Cibodas）は、豊かな自然環境の中に位置しています。約85ヘクタールの敷地を持ち、年間平均気温は約20度、湿度約81パーセントという、高地特有の穏やかで湿潤な気候に恵まれています。現在は、インドネシア科学研究所（Lembaga Ilmu Pengetahuan Indonesia）によって管理・運営されています。

歴史

この植物園の歴史は、1852年にまで遡ります。当時のボゴール植物園（旧称 Lands Plantentuin te Buitenzorg）の学芸員であったヨハネス・エリアス・テイスマンによって、ボゴール植物園の分園として開設されました。その後のレイアウトの整備は、第3代園長であるルードルフ・スヘッフェルによって完成されました。設立当初の主な目的は、ボゴール植物園では栽培が困難であった亜熱帯性の植物を高地環境で育成することでした。1854年には、重要な薬用植物であるキニーネの原料となるキナノキの栽培が始まりました。このキナノキの種子は、ユストゥス・カール・ハッスカールが南米から持ち込み、ジャワ島に導入したものです。その他、オーストラリア原産のユーカリやヨーロッパの針葉樹などもこの地で栽培されました。

植物コレクション

チボダス植物園は、世界各地から集められた多様な植物の宝庫です。現在、園内には約10,000種にも及ぶ植物が栽培・展示されています。その中には、
ランが320種
サボテンが289種
* 多肉植物が22種

といった、特定の科における豊富なコレクションが含まれます。特筆すべきは、西ジャワ地方固有の植物の割合は比較的少ない点です。研究機関としての役割も担っており、植物標本館には約5,000種の貴重な標本が収蔵され、学術研究に活用されています。

園内施設

園内は、植物の特性に応じた多様な展示エリアに分かれています。デリケートな植物を管理する温室では、特にランやサボテンなどが栽培されています。広大な野外エリアには、テーマ別の庭園が設けられています。例えば、日本の桜が楽しめるサクラ庭園、珍しい藻類を集めた藻類庭園、美しいシャクナゲ庭園、多様なシダ類が茂るシダ庭園、伝統的な薬草が植えられた薬草庭園などがあり、訪問者は様々な植物の世界を体験できます。また、比較的新しい施設として、2014年には食虫植物、特にネペンテス（ウツボカズラ）を専門に展示する「House of Nepenthes (Rumah Kantung Semar)」がオープンし、ユニークな植物の世界を紹介しています。

チボダス植物園は、その歴史、豊かなコレクション、そして研究活動を通じて、植物学の振興と自然保護に貢献しています。

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