チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ：ナイジェリアが生んだ世界的な作家

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェは、1977年、ナイジェリア南東部エヌグ州で生まれました。6人兄弟姉妹の5番目として、大学教授の父と大学職員の母のもと、ナイジェリア大学のある大学町で育ちました。中等教育後、ナイジェリア大学で医学と薬学を学び始めますが、19歳で奨学金を得て渡米。その後、ドレクセル大学を経て東コネチカット大学でコミュニケーション学と政治学を専攻、創作活動を開始しました。ジョンズ・ホプキンズ大学でクリエイティブ・ライティングの修士号を取得後、イェール大学でアフリカ学の修士号も取得しています。2016年には名誉学位をジョンズ・ホプキンズ大学から、その後も複数の大学から名誉学位を授与されています。

文学への道：影響とキャリア

アディーチェの文学への関心は、10歳の頃、チヌア・アチェベの『崩れゆく絆』を読んだことに始まります。ナイジェリア文学の先駆者であるブチ・エメチェタにも強い影響を受けたと語っており、エメチェタの死を悼むSNS投稿でもその深い敬意を表しています。1990年代後半には詩集と戯曲を出版。大学時代には、異なる文化や性役割の衝突を描く短編小説「My Mother, the Crazy African」を執筆しました。

その後、数々の賞を受賞、ノミネートされます。ケイン賞最終選考、BBCワールド・サービス短編賞受賞、オー・ヘンリー賞受賞など、才能を早くから認められました。2003年の処女長編小説『パープル・ハイビスカス』はオレンジ賞最終選考に残るなど高い評価を受け、2006年の第2作目長編小説『半分のぼった黄色い太陽』でオレンジ賞（フィクション部門）を史上最年少で受賞、2020年には同賞の25年間における最高傑作にも選出されました。この作品はビアフラ戦争を背景にしたラブストーリーで、映画化もされています。

2013年の長編小説『アメリカーナ』は、アメリカ、アフリカ、ヨーロッパを舞台にした作品で、全米批評家協会賞を受賞、『ニューヨーク・タイムズ』紙の年間ベスト10にも選出されました。2017年には、フェミニズムに関するエッセイ『イジェアウェレへ フェミニスト宣言、15の提案』を発表。これは友人からの相談をきっかけに書かれたもので、娘をフェミニストとして育てるためのアドバイスが記されています。

世界へのメッセージ：TEDトークとフェミニズム

アディーチェは、2008年のTEDxトーク「シングルストーリーの危険性」で広く知られるようになりました。このスピーチでは、単一の視点による偏見や誤解の危険性を警告し、多様な視点の重要性を訴えました。2012年のTEDxトーク「We Should All Be Feminists」も大きな反響を呼び、ビヨンセが自身の楽曲に取り入れるなど、世界的な話題となりました。これらのスピーチは書籍化され、多くの言語に翻訳されています。

ナイジェリアと世界を繋ぐ作家

アディーチェは、活発な執筆活動に加え、毎年ナイジェリアで若い小説家を育成するワークショップを開催するなど、母国への貢献も続けています。彼女の作品は30以上の言語に翻訳されており、作家としてだけでなく、世界的なオピニオンリーダーとして、アフリカ文学の発展に大きく貢献していると言えるでしょう。彼女の作品は、アフリカの現実をありのままに伝え、単一の物語に囚われない多様な視点を通して、読者に深く考えさせるものです。読売新聞のインタビューでは、「読者の心の中に、絵が浮かぶような作品を描きたい」「ありのままのアフリカ、生きているアフリカを書きたい」と語っており、その言葉どおり、彼女の作品は世界中の読者に感動を与え続けています。

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