チャイニーズ・フー・ドッグ

チャイニーズ・フー・ドッグ：謎多き犬種の真実

チャイニーズ・フー・ドッグは、中国とアメリカ合衆国を原産とする犬種です。しかし、その出自については多くの矛盾や疑問点が指摘されており、専門家の間でも意見が分かれています。

複雑な歴史

アメリカの犬種クラブは、チャイニーズ・フー・ドッグは3000年前に中国に存在した古代犬種の末裔であると主張しています。一度は絶滅したと考えられていましたが、近年になって中国の福建省で末裔が発見され、北欧のスピッツ犬種の血を加えて再構築されたとしています。

しかし、多くの専門家は、チャイニーズ・フー・ドッグはアメリカで作出された新しい犬種であり、古代犬種の再生版とするのは誤りであると考えています。彼らは、チャイニーズ・フー・ドッグはチャウチャウと小型の愛玩犬種との交雑種を元に改良されたと主張しています。

犬種クラブ側は、本種の先祖が福建省原産であると主張していますが、そもそもその地にチャイニーズ・フー・ドッグの元となる古代犬種が存在していたかどうかは定かではありません。福建省にはフー・グレイハウンドという犬種が存在しますが、その名の通りグレイハウンドタイプであり、チャイニーズ・フー・ドッグのようなスピッツタイプではありません。また、フー・グレイハウンドは18世紀頃に作出された犬種であるため、存在していた年代にも矛盾が生じます。

しかし、古代犬種が必ずしも存在していなかったという確実な証拠はなく、中国の他の地域で生まれた古代犬種の最後の生き残りがたまたま福建省にいて、それを元に復元が行われた可能性も否定できません。

原産地についても議論が続いていますが、現状ではアメリカ合衆国を原産国とする考え方が有力です。ただし、今後の議論の進展によっては中国原産として扱われる可能性もあります。

チャイニーズ・フー・ドッグの末裔は、年代は不明ながらアメリカ合衆国に輸入され、そこで改良・再構築されて誕生しました。その過程において中国側の関与はほとんどなく、アメリカ国内で再生・ブリーディングが行われていました。そして、1990年代になってから中国にも正式に逆輸入されるようになりました。

このように、出生については多くの論争点が残されていますが、アメリカでは根強い人気があり、愛好家も多く存在します。しかし、まだメジャーな犬種とは言えず、アメリカ以外ではほとんど知られていないのが現状です。もう一つの原産地とされる中国でも、その存在はあまり知られていませんが、愛好家は存在します。

特徴

容姿はチャウチャウによく似ていますが、より穏やかな目をしています。立ち耳で、上部に位置しています。舌は青いものとピンク色のものがいます。尾は巻き尾でふさふさしており、豊かなロングコートを持ちます。毛色はチャウチャウと同様に単色ですが、ブラックマスクを持つ個体もいます。サイズはスタンダード、ミニチュア、トイの3種類があります。

性格は明るく活発ですが、頑固で用心深い一面も持ち合わせています。

その他の情報

チャイニーズ・フー・ドッグの先祖とされる犬種は、ティベタン・マスティフのような古代犬種であると考えられていますが、具体的な犬種は特定されていません。また、ハン・ドッグとチベタン・マスティフの中間種の末裔であるという説もあります。

チャイニーズ・フー・ドッグが古代犬種ではなく、チャウチャウを交配させて作られたという説があったとしても、チャウチャウ自体が古代犬種の一種であるため、ある意味では古代犬種の血を引いていると言えるでしょう。


参考文献
『デズモンド・モリスの犬種事典』デズモンド・モリス著書、福山英也、大木卓訳 誠文堂新光社、2007年

関連項目
チャウチャウ
ハン・ドッグ
フー・グレイハウンド
* 犬の品種一覧

もう一度検索