チャップリンの画工

『チャップリンの画工』は、1914年に公開されたキーストン社製作の短編サイレント映画であり、チャールズ・チャップリンが監督を務め、主演も担当しています。チャップリンのフィルモグラフィーにおいては22作目に位置づけられています。

あらすじ

物語は、画家（チャップリン）がマデリン（セシル・アーノルド）の肖像画を描く場面から始まります。画家はマデリンに恋心を抱いていましたが、彼女は裕福な支援者（フリッツ・シェイド）に奪われてしまいます。失恋の痛みに打ちひしがれた画家は、バーで酒を飲み、描いた肖像画を床に投げ捨ててしまいます。

数年後、画家は子供を連れた夫と共に歩くマデリンを見かけますが、彼女は画家には目もくれません。全てを諦めた画家は、未来に向かって歩き出すのでした。

背景と評価

本作は、『笑ひのガス』や『チャップリンの道具方』と同様に、ヴォードヴィルに由来する作品です。脚本はチャップリン自身が執筆していますが、詩人ヒュー・アンソニー・ダーシーの失恋をテーマにした詩「The Face on the Bar Room Floor」を原作としています。ただし、原作の詩を風刺的に扱い、挿絵付きの字幕として使用しています。

映画史家のデイヴィッド・ロビンソンは、チャップリンの伝記の中で本作を「技法的に見て、チャップリン映画の中で最も興味を惹かない作品の一つ」と評しています。さらに、続けて撮影された『レクリエーション』や『男か女か』と共に、「ただ機械的に生産されたとしか思えない」と述べています。

キャスト

チャールズ・チャップリン - 画家
セシル・アーノルド - マデリン
フリッツ・シェイド - マデリンを奪った恋人
ヴィヴィアン・エドワーズ - 女
チェスター・コンクリン - 酒飲み
ハリー・マッコイ - 酒飲み
ハンク・マン - 酒飲み
ウォレス・マクドナルド - 酒飲み

『チャップリンの画工』が示唆するもの

『チャップリンの画工』は、チャップリンの初期の作品であり、彼の映画製作における試行錯誤の段階を示すものと言えるでしょう。ヴォードヴィルの要素を取り入れながらも、失恋という普遍的なテーマを扱い、風刺的な視点から社会を描き出そうとする姿勢が見られます。

ロビンソンの評価は厳しいものですが、本作はチャップリンのフィルモグラフィー全体を理解する上で、重要な位置を占めていると言えるでしょう。彼の初期の作品群と比較することで、チャップリンが後の作品で確立していく独自のスタイルやテーマが、どのように形成されていったのかを知る手がかりとなります。

短い作品ながらも、画家の心情や社会の風刺が込められており、チャップリンの才能の一端を垣間見ることができる作品です。

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