チャップリンの道具方

『チャップリンの道具方』（The Property Man）は、1914年にキーストン社が製作した短編サイレント映画であり、チャールズ・チャップリンが監督と主演を務めました。映画研究家ウノ・アスプランドが制定したフィルモグラフィーによれば、チャップリンの映画出演21作目にあたります。別邦題として『チャップリンの小道具係』、『舞台裏』とも呼ばれます（ただし、ミューチュアル社の『チャップリンの舞台裏』とは異なります）。

あらすじ

舞台の道具方を務めるチャーリーは、出番を終えた役者たちでごった返す楽屋で、何かが起こることを期待して待ち構えています。彼の期待通り、楽屋は道具や消防用ホースで散らかり、大混乱となります。チャーリーは若い女性を巡って老俳優と舞台裏で争いを繰り広げ、手荒な扱いをします。この騒動は舞台上まで広がり、観客も巻き込む大騒ぎに発展し、ついにはホースから水が舞台上の人々に吹きかけられるという結末を迎えます。

概要

本作は、前作『笑ひのガス』と同様に、ヴォードヴィルに由来するネタを扱った作品です。チャップリン映画のジャンル分けにおいては、『チャップリンの活動狂』、『男か女か』、『チャップリンの役者』、『チャップリンの舞台裏』などと同様に、「華やかな世界の裏側のドタバタ」を描いた作品に分類されます。

一般的な「チャーリー」像である「優しくイノセントな放浪者」が確立される以前の作品であり、「弱者をいじめたり、性的にいやらしい役柄」を垣間見ることができます。特に、チャーリーが老俳優を残酷に扱うシーンは、当時の評論家を驚かせたと伝えられています。放水のギャグは、後の作品である『チャップリンの寄席見物』や『ニューヨークの王様』でも使用されています。

キャスト

チャールズ・チャップリン - 道具方
フィリス・アレン - ハムリン・ファット
アリス・ダヴェンポート - 女優
チャールズ・ベネット - 俳優
マック・セネット - 観客
ノーマ・ニコルズ - ヴォードヴィル芸人
ジョー・ボルドー - 老いた俳優
ハリー・マッコイ - 飲んでいる観客
リー・モリス - 観客

参考文献

デイヴィッド・ロビンソン『チャップリン』 上、宮本高晴、高田恵子 訳、文藝春秋、1993年4月。ISBN 978-4-1634-7430-4。
大野裕之『チャップリン再入門』日本放送出版協会〈生活人新書〉、2005年4月。ISBN 978-4-1408-8141-5。
大野裕之『チャップリン・未公開NGフィルムの全貌』日本放送出版協会、2007年3月。ISBN 978-4-1408-1183-2。

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