チェスター・コンクリン

チェスター・コンクリン（Chester Conklin, 1886年1月11日 - 1971年10月11日）は、アメリカ合衆国出身の俳優であり、コメディアンです。約半世紀にわたり、300本近い映画に出演しました。1910年代には、チャールズ・チャップリン、ロスコー・“ファッティ”・アーバックル、マック・スウェイン、メーベル・ノーマンドといった、当時の人気コメディアンたちと数多くの作品で共演し、コメディ界で確固たる地位を築きました。

特に、マック・スウェインとはキーストン社時代から名コンビとして知られ、スウェインが演じる「アンブローズ氏」と対になる、独特な口ひげがトレードマークの「ウォルラス氏」を演じ、人気を博しました。1920年代以降は、コメディ作品に加え、ドラマ性のある作品にも出演するようになり、トーキー映画の時代を迎えてからも、第二次世界大戦後まで息長く活躍を続けました。

生涯

本名チェスター・クーパー・コンクリンとして、1886年1月11日にアイオワ州オスカルーサで生まれました。鉱業が盛んな地域で育ちましたが、両親は彼が役人になることを望んでいました。しかし、地元の祭りで朗読の賞を受賞したことをきっかけに、コメディアンになることを夢見るようになり、両親の反対を押し切って家出を決意します。セントルイスにたどり着いたコンクリンは、ヴォードヴィルの舞台に飛び入りで出演する機会を得て、一座の先輩から特徴的なアクセントとセイウチのような口ひげを伝授され、「ウォルラス氏」というキャラクターを確立しました。その後、「ウォルラス氏」として様々なヴォードヴィル一座やサーカスを渡り歩き、経験を積みました。

1912年の冬、ヴェネツィアでの巡業中にマック・セネットと出会い、セネットが率いるキーストン社の作品に感銘を受け、入社を決意。一日3ドルのギャラで契約を結びました。キーストン社には6年あまり在籍し、キーストン・コップスの一員として活躍する傍ら、「ウォルラス氏」のキャラクターを披露し、マック・スウェインの「アンブローズ氏」とのコンビを結成。「アンブローズ氏とウォルラス氏」シリーズは、瞬く間に人気を博しました。

1914年にチャールズ・チャップリンがキーストン社に入社すると、コンクリンはチャップリンのキーストン社での第一作『成功争ひ』から共演を重ね、「ウォルラス氏」はチャップリンのキャラクター「チャーリー」とも相性が良く、多くのファンを魅了しました。チャップリンやスウェイン、メーベル・ノーマンドとともにキーストン作品の顔として活躍しましたが、後にウィリアム・フォックスが設立したフォックス・フィルム・コーポレーション（後の20世紀フォックス）と接近し、最終的にキーストン社を離れ、フォックス・フィルムに移籍しました。しかし、間もなくフォックス・フィルムとの契約を解消し、以降はフリーランスとして活動することになりました。

1920年代に入ると、コメディ以外の分野にも挑戦し、エリッヒ・フォン・シュトロハイム監督の1924年の映画『グリード』では、ザス・ピッツ演じるヒロインの父親役を演じました。また、ファースト・ナショナル、ゴールドウィン、パラマウント映画など、様々な映画会社の作品に出演しました。W・C・フィールズ、ダリル・F・ザナックといった大物プロデューサーの作品にも参加し、1930年代に入ると再びコメディに回帰。三ばか大将シリーズや、1936年の『モダン・タイムス』ではチャップリンと久しぶりに共演し、往年の「ウォルラス氏」の扮装で技師を演じました。1940年の『独裁者』にも出演し、チャップリン演じるユダヤ人の床屋に、ラジオから流れる音楽に合わせて髪とヒゲを整えてもらう客を演じました。第二次世界大戦後も、ベティ・ハットンら若い世代の役者と共演しましたが、徐々に活動は減少し、晩年はサンタクロースの扮装でロサンゼルスのデパートに登場することもあったと伝えられています。

コンクリンは生涯に4回の結婚を経験しました。1913年にミニー・V・グッドウィンと結婚し、20年間連れ添いましたが1933年に離婚。1934年にはマルゲリータ・ルースと再婚しましたが、マルゲリータは結婚から4年後に合併症で亡くなりました。その後、1949年にヴァルタ・C・ジェネシーと結婚しましたが、1965年以前に離婚。1965年には、長年病気がちで入院生活を送る中で出会ったキャサリン・ジューン・アイレス・グンターと4度目の結婚をしました。2人はロサンゼルスのバンナイズ地区に移り住み、1966年に製作されたヘンリー・フォンダ主演の『テキサスの五人の仲間』が、コンクリンにとって最後の出演作となりました。

1971年10月11日、コンクリンは85歳で生涯を閉じました。遺体は火葬に付され、灰は海に撒かれました。1960年には、映画界への貢献が認められ、ヴァイン通り1560番地にハリウッド・ウォーク・オブ・フェームの星が刻まれました。

コンクリンはフリーメイソンの一員でもあり、1916年9月18日にフリーメイソンとしての階級を昇級しました。

主な出演作品

Hubby's Job（1913年）
成功争ひ（1914年）
メーベルの窮境（1914年）
夕立（1914年）
タンゴのもつれ（1914年）
メーベルの身替り運転（1914年）
恋の二十分（1914年）
チャップリンの総理大臣（1914年）
メーベルの多忙な一日（1914年）
チャップリンの道具方（1914年）
チャップリンの画工（1914年）
男か女か（1914年）
髭のあと（1914年）
チャップリンとパン屋（1914年）
アルコール自動車競争の巻（1914年）
醜女の深情け（1914年）
Anna Christie（1923年）
グリード（1924年）
醜女の深情け 1928年版（1928年）
キーストン・ホテル（1935年）
モダン・タイムス（1936年）
ハリウッド・カヴァルケード（1939年）
スミス都へ行く（1939年）
独裁者（1940年）
幽霊紐育を歩く（1941年）
サリヴァンの旅（1941年）
偉大なる瞬間（1944年）
ポーリンの冒険（1947年）
レッツ・ダンス（1950年）
The Beast with a Million Eyes （1955年）
* テキサスの五人の仲間（1966年）

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