チャンス青木

チャンス青木（本名：青木 博志）は、日本のコメディアンであり、漫才協会の理事も務めた人物です。1943年または1944年に熊本県熊本市に生まれ、2016年11月29日に72歳でその生涯を閉じました。熊本県立済々黌高等学校を経て西南学院大学経済学部を卒業しています。大学時代には演劇部の部長として活動するなど、舞台の世界に早くから関心を持っていたようです。大学卒業後は一度パルプ会社に勤務しましたが、お笑いの道に進むため退職を決意します。

芸人としてのキャリアは、1972年に元Wけんじの宮城けんじに師事したことから始まりました。そして1977年、斎藤チャンスと共に漫才コンビ「Wチャンス」を結成。主に浅草の松竹演芸場や木馬館といった、東京演芸の伝統的な舞台で活躍を見せました。しかし、Wチャンスは1983年に解散。その後、チャンス青木はピン芸人として、浅草松竹演芸場やゴロゴロ会館などを拠点に、漫談や司会といった形で芸を披露し続けました。

Wチャンス解散後も、一時的に「鋭才・鈍才」（青木は「鋭才」担当）や、ケーシー高峰門下のコダマと組んだ「チャンス・コダマ」といったコンビでの活動を試みましたが、いずれも長続きはしませんでした。一方で、後輩芸人たちへの面倒見の良さには定評があり、その人望から、2002年には漫談家としては初めて漫才協会の理事に就任しています。

彼の活動の場はもっぱら寄席など演芸場が中心であり、テレビなどのメディアに出演する機会は非常に限られていました。そのため、世間一般での知名度は高くはなかったものの、お笑いコンビのナイツが自身のトークやネタの中で、メディアにはあまり登場しない「浅草の師匠」の代表格として彼の名前を頻繁に挙げたことで、一部ではその存在が知られることとなりました。ナイツは、浅草演芸場を中心とする芸人たちの世界を描写する際に、チャンス青木を欠かせない人物として語っていました。

晩年には、真木淳と「淳とチャンス」というコンビを組み、再び漫才を披露することもあったようです。彼にとって最後の舞台出演となった2016年10月22日の漫才大会（浅草公会堂で開催）でも、この「淳とチャンス」として漫才を演じ、観客を沸かせました。

テレビ出演としては、2006年6月の「金曜かきこみTV」のお笑い掲示板コーナーや、「年忘れ漫才競演」で内海桂子の相手を務めたこと、そして2012年9月16日放送の「アメトーーク！」の「浅草芸人師匠めぐり」企画に出演した記録が残っています。

長い間、浅草のお笑い界に貢献してきたチャンス青木は、最後の舞台からおよそ一ヶ月後の2016年11月29日、自宅にて心不全のため安らかに息を引き取りました。享年72歳でした。彼は、舞台に生き、後進を育て、浅草の灯を守り続けた芸人として、多くの関係者から慕われました。

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