チャンピオン誕生

『チャンピオン誕生』：ドルーピーの意外な勝利

1949年4月9日、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）より公開された『チャンピオン誕生』（原題：Señor Droopy）は、アニメーターの巨匠テックス・アヴェリーが手掛けたドルーピーシリーズの一作品です。本作は、メキシコの闘牛場を舞台に、コミカルでスリリングな展開が繰り広げられます。

物語の舞台：メキシコの闘牛場

物語は、メキシコの熱気に満ちた闘牛場から始まります。そこでは、闘牛のチャンピオンであるオオカミと、挑戦者ドルーピーが、雑誌に掲載された美しい女性を巡って対決します。

勇敢なる挑戦者と、間抜けなチャンピオン

ドルーピーは勇敢に闘牛に挑戦しますが、猛牛の圧倒的な力に翻弄され、なかなかうまくいきません。一方、オオカミは巧みな技で牛を操り、勝利目前まで追い詰めます。しかし、油断した隙にドルーピーに邪魔され、形勢は逆転。猛牛に追いかけ回されるオオカミの姿は、見ている者を笑わせます。

オオカミは辛うじて牛を扉の向こうに追いやり、勝利を宣言しますが、その隙を突かれ、扉から出てきた牛に突かれて場外へ退場。一方、勝ち誇る牛に勝負を挑んだドルーピーも、軽くあしらわれ、雑誌の美女を前に落胆します。「友達になれないよ。夢見た僕が馬鹿だったんだな…」と、ドルーピーはすすり泣きます。

ドルーピーの逆襲と、新たなチャンピオン

その様子を見て、牛は美女の顔に落書きをし、悪態をつきます。この仕打ちに激怒したドルーピーは、秘めたる力を解放。驚異的なパワーで牛を圧倒し、場外へ放り投げます。こうして、ドルーピーは新たなチャンピオンとなり、憧れの美女を手に入れることになります。

作品の特色と、ドルーピーの愛称

この作品は、ドルーピーという愛称が正式に定着した記念すべき作品でもあります。ドルーピーの冷静沈着な態度と、意外な強さ、そしてコミカルな動きが、本作でも存分に発揮されています。オオカミや牛といったキャラクターも個性的で、それぞれの個性的な動きが、作品全体にユーモラスな雰囲気をもたらしています。

スタッフとキャスト

監督は、数々の名作アニメーションを生み出したテックス・アヴェリー。製作はフレッド・クインビー。プレストン・ブレア、ボブ・キャノン、ウォルター・クリントン、マイケル・ラー、グラント・シモンズといった実力派アニメーターたちが原画を担当し、スコット・ブラッドリーが音楽を担当しています。なお、牛の声優はテックス・アヴェリー本人が務めています。また、雑誌の美女にはメキシコ出身の女優、リーナ・ローマイが実写で出演しています。

日本での放映と、収録ソフト

日本では、TBS版『トムとジェリー』の短編アニメーションとして放映され、多くの視聴者に親しまれてきました。『トムとジェリー ドルーピーといっしょ VOL.3』（VHS）、『迷探偵ドルーピーの大追跡 編』（DVD）、『トムとジェリーVOL.5 特典映像』（DVD）などに収録されています。

『チャンピオン誕生』は、ドルーピーの魅力が詰まった、まさに必見の作品と言えるでしょう。

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