チャン・チェ

チャン・チェ（張徹、Chang Cheh、1923年2月10日 - 2002年6月22日）は、中国・杭州市出身の映画監督で、香港武侠映画の巨匠としてその名を馳せています。本名を張易揚といい、上海で育ちました。

生い立ちと初期のキャリア

チャン・チェの父は、浙系の軍閥に属していました。彼は重慶国立中央大学（現在の南京大学）を卒業後、抗戦のための文化活動に従事し、その過程で映画関係者との交流を深めました。1948年には台湾に渡り、1949年に『阿里山風雲』で映画監督としてデビューを果たします。その後、国民党のために官僚や軍人としても活動しましたが、1957年に香港へ移住し、小説や映画評論の執筆を始めました。

ショウ・ブラザーズでの活躍

1962年、チャン・チェは香港の映画会社ショウ・ブラザーズに入社します。1966年の『虎侠殲仇』で初めて武侠映画を手がけ、1967年にはジミー・ウォング主演の『片腕必殺剣』が記録的な大ヒットを記録しました。この作品で、彼は男優の力強さと悲劇的な結末、そして血なまぐさい暴力描写を特徴とする「陽剛」と呼ばれる独自の作風を確立しました。それまで女性スターが中心であった香港映画の潮流を、男性アクション中心へと大きく転換させる原動力となりました。

その後もチャン・チェは、『大女侠』（1968年）、『ヴェンジェンス/報仇』（1970年、第16回アジア映画祭最優秀監督賞受賞）、最高傑作とされる『ブラッド・ブラザース 刺馬』（1973年）など、数々の傑作を世に送り出し、「新武侠世紀」の旗手として、キン・フーと並び称される存在となりました。

台湾での活動とカンフー映画への転換

1974年、チャン・チェは再び台湾に拠点を移し、自身のプロダクション「長弓電影公司」を設立。『嵐を呼ぶドラゴン』（1974年）などの作品を監督しました。1977年に香港へ戻ると、『五毒拳』（1978年）や『残酷復讐拳』（1978年）など、後にカルト的人気を博すカンフー映画を手がけました。1983年には、さらに台湾で「長河影業公司」を立ち上げ、『上海13』（1984年）を監督しています。

受賞と晩年

2002年、チャン・チェはその生涯の功績を讃えられ、香港電影金像奨で「終身成就賞」を受賞しました。しかし、その2ヶ月後、肺炎によりこの世を去りました。彼の助監督を務めた人物の中には、ジョン・ウーがいます。

主な監督作品

チャン・チェが監督した主な作品には、以下のようなものがあります。

大刺客 (1967)
片腕必殺剣 (1967) - 脚本/監督
大女侠 (1968) - 脚本/監督
続・片腕必殺剣 (1969)
死角（1969）
ヴェンジェンス/報仇 (1970)
英雄十三傑 (1970)
復讐武侠客 (1971)
上海ドラゴン英雄拳 (1971)
新・片腕必殺剣 (1971)
フィストバトル/拳撃 (1971)
無名英雄 (1971)
嵐を呼ぶドラゴン (1972/1974) - 少林英雄傳四部作
四騎士 (1972) - 監督/脚本
続・拳撃 悪客 (1972) - 監督/出演
復讐ドラゴン 必殺拳 (1972)
水滸伝 (1972)
水滸伝 杭州城決戦 (1973)
ブラッド・ブラザース 刺馬 (1973) - 監督/脚本
新・嵐を呼ぶドラゴン (1974) - 少林英雄傳四部作
洪家拳対詠春拳 (1974) - 少林英雄傳四部作
ヒーロー・オブ・クンフー 裸足の洪家拳 (1975)
カンフー東方見聞録 (1975) - 脚本/監督
続・少林寺列伝 (1975) - 少林英雄傳四部作
ヒーロー・オブ・カンフー 蔡李仏拳 (1976) - 監督/脚本
続・嵐を呼ぶドラゴン (1976)
少林寺列伝 (1976)
ヒーロー・オブ・カンフー 猛龍唐人拳 (1977) - 脚本/監督
南少林寺VS北少林寺 (1977)
残酷復讐拳 (1978)
五毒拳 (1978) - 監督/脚本
少林拳対武当拳 (1980) - 監督/脚本
仮面復讐拳 (1981) - 脚本/監督
少林拳対五遁忍術 (1982) - 脚本/監督
上海13 (1984) - 監督/脚本

関連人物

チャン・チェの作品に出演した俳優や、関係の深い人物として、以下のような名前が挙げられます。

ジミー・ウォング（王羽）
デビッド・チャン（姜大衛）
ティ・ロン（狄龍）
チェン・カンタイ(陳觀泰)
アレクサンダー・フーシェン(傅聲)
* クララ・ウェイ（惠英紅）


チャン・チェは、その独自のスタイルと数々の作品を通じて、香港映画界に多大な影響を与え、今なお多くの映画ファンに愛され続けています。

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