ティ・ロン

ティ・ロン：香港映画界を彩るレジェンド

ティ・ロン（狄龍、1946年8月19日-）は、香港を代表するベテラン俳優である。日本では『男たちの挽歌』シリーズでの出演で広く知られているが、そのキャリアは香港カンフー映画全盛期にまで遡る。数多くの主演作で人気を博した彼は、時代の移り変わりとともに低迷期を経験するものの、『男たちの挽歌』での見事な復活劇で再び脚光を浴び、現在も精力的に活動を続けている。

華麗なるキャリアの幕開け

1968年、ティ・ロンはショウ・ブラザーズの俳優養成所に参加。翌年には、張徹（チャン・チェ）監督の目に留まり、『死角』で主役デビューという華々しいスタートを切る。その後は、楚原監督作品への出演が続き、『楚留香』『蝙蝠傳奇』『天涯明月刀』『多情剣客無情剣』など、数々の作品で主演を務めた。特に、張徹監督作品では、姜大衛（デビッド・チャン）とのダブルキャストで多くの成功を収め、二人の共演は香港映画史に輝く名コンビとして語り継がれている。

端正な顔立ちと、詠春拳の達人としての高い武術スキルを兼ね備えたティ・ロンは、カンフー映画で圧倒的な存在感を放つ。その人気は香港にとどまらず、台湾や東南アジアへと広がり、彼は瞬く間にスターダムにのし上がった。

数々の受賞歴と絶頂期

ティ・ロンの演技力は高く評価され、数々の賞を受賞している。『ブラッド・ブラザース 刺馬』（1973年）での悪役演技が認められ、第11回金馬奨優秀演技特別賞と第19回アジア映画祭表現特出性格男優賞をダブル受賞。さらに、『冷血十三鷹』（1979年）では第25回アジア太平洋映画祭演技最特出男優賞を受賞するなど、卓越した演技力とアクションで武侠映画界のトップスターとしての地位を確固たるものとした。

1985年、18年間で80作以上の映画に出演し、監督業も手掛けたショウ・ブラザーズを退社。

低迷からの復活と現在

ショウ・ブラザーズ退社後は一時低迷期を迎えるが、1986年、ジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』への出演が大きな転機となる。この作品での熱演は高く評価され、第23回金馬奨最優秀主演男優賞を受賞。見事な復活劇を果たしたティ・ロンは、その後も出演作品数は少ないものの、重厚な演技で存在感を示し続けている。『流星 THE KID』（2000年）では第19回香港電影金像奨最優秀助演男優賞、2007年には第12回香港電影金紫荊奨卓越成就賞を受賞するなど、数々の賞に輝いている。2015年には『わたし、ニューヨーク育ち』で第7回マカオ国際電影節最優秀主演男優賞を受賞し、その演技力は衰えることなく、現在も高い評価を得ている。

主な出演作品

ティ・ロンが出演した作品は非常に多く、その代表作を以下に挙げる。

ヴェンジェンス 報仇 (1970)
新・片腕必殺剣 (1971)
フィスト・バトル 拳撃 (1971)
復讐武侠客 (1971)
ブラッド・ブラザース 刺馬 (1973)
英雄十三傑 (1973)
冷血十三鷹 (1978)
男たちの挽歌 (1986)
男たちの挽歌 II (1987)
流星 THE KID (1999)
* わたし、ニューヨーク育ち (2015)

これら以外にも、多くのカンフー映画、アクション映画、ドラマなど幅広いジャンルの作品に出演し、香港映画史に多大な貢献をしてきた。ティ・ロンは、そのキャリアを通じて、時代を超えて愛される香港映画界のレジェンドとして、これからも輝き続けるだろう。

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