チャールズ・アルジャーノン・パーソンズ

サー・チャールズ・アルジャーノン・パーソンズ：蒸気タービン技術の革命家

サー・チャールズ・アルジャーノン・パーソンズ (1854-1931) は、イギリス系アイルランド人の技術者、工学者として、蒸気タービン技術における革命的な貢献で歴史に名を刻みました。著名な天文学者、第3代ロス伯爵を父に持ち、ダブリン大学トリニティ・カレッジ、ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジと名門校を卒業後、アームストロング・ホイットワース社の技術者としてキャリアをスタートさせました。艦船動力、電気技術、光学機器など幅広い分野で才能を発揮した彼は、やがて自身の会社を設立し、世界を変革する発明に挑むことになります。

パーソンズの最も重要な業績は、1884年に特許を取得した多段式蒸気タービンです。従来のレシプロエンジンに比べ、圧倒的な熱効率を誇るこのタービンは、蒸気がタービン翼を通過する際に速度を段階的に減速させることで、効率的なエネルギー変換を実現しました。この技術革新は、発電分野に大きな影響を与えました。当時のダイナモ発電機は1000～1500回転/分に留まっていましたが、パーソンズのタービンは18000回転/分という驚異的な回転数を達成し、発電能力を飛躍的に向上させました。

パーソンズは自ら設計したタービン発電機を製造し、イギリスのみならず世界中に供給しました。その技術は瞬く間に広まり、発電所の規模と効率は劇的に変化していきました。1923年には、当時世界最大規模となる出力5万キロワットの発電所の設計をシカゴで請け負うなど、その活躍は世界規模に広がっていきました。パーソンズが設立した会社は、その後も蒸気タービン技術の開発を続け、1990年代後半にシーメンス社の子会社となりました。

蒸気タービン技術への貢献以外に、パーソンズは初期の空気圧式蓄音機であるAuxetophoneの開発者としても知られています。彼の才能は多岐に渡り、技術革新への飽くなき探究心と卓越した技術力によって、多くの分野に貢献しました。

パーソンズの功績は数々の賞によって認められました。王立協会からはランフォード・メダル、ベーカリアン・メダル、コプリ・メダルを受賞し、ロイヤル・ソサエティ・オブ・アーツからはアルバート・メダル、フランクリン協会からはフランクリン・メダル、英国工学技術学会からはファラデー・メダルなど、数々の栄誉に輝きました。また、バス勲章ナイト・コマンダー、メリット勲章など、イギリス政府からも高く評価されています。

1897年のポーツマスのヴィクトリア女王の観艦式では、蒸気タービンを搭載した実験艇タービニアのデモンストレーションを行い、その実力を世界に示しました。このタービニアは現在、ニューカッスルの博物館に展示され、蒸気タービン技術の歴史を物語る重要な遺産となっています。

サー・チャールズ・アルジャーノン・パーソンズは、単なる発明家ではなく、技術革新によって世界に大きな影響を与えた真の工学者でした。彼の功績は、現代社会の基盤を支える技術の発展に大きく貢献し、今後も長く記憶されるでしょう。

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