チャールズ・ウェスレー

チャールズ・ウェスレー（Charles Wesley, 1707年12月18日 - 1788年3月29日）は、18世紀イングランドにおいて、兄ジョン・ウェスレーと共にメソジスト運動を牽引した主要な人物の一人です。彼は特に、その驚異的な賛美歌の創作数と質の高さで、キリスト教音楽史に不朽の足跡を残しました。

チャールズは、兄ジョンと同じく、父サミュエル・ウェスレーがイングランド国教会の教区司祭を務めていたリンカーンシャー州のエプワースで生を受けました。ウェストミンスター・スクールを経て、兄も学んだオックスフォード大学クライスト・チャーチに進学。そこで学びを深める中で、信仰に対する熱心な探求心を抱くようになります。1729年、彼はオックスフォード大学の仲間たちと共に、後に「オックスフォード・メソジスト」と呼ばれることになる信仰的な集まりを結成しました。この集まりには、後にメソジスト運動の中心人物となる兄ジョンやジョージ・ホウィットフィールドも加わり、定期的な祈りや聖書研究、貧困者への支援活動などを行いました。

父や兄と同様に、チャールズは聖職の道を選び、1735年に司祭に叙任されます。同年、彼は兄ジョンと共に、総督ジェイムズ・オーグルソープの補佐官として北米大陸のジョージア植民地へと渡航しました。この旅は、新たな地での宣教活動を目的としていましたが、様々な困難に直面し、チャールズは一年足らずでイングランドへと帰国することになります。

メソジスト運動を共に推進する中で、チャールズと兄ジョンは非常に親密な関係を築きましたが、信仰や教会のあり方に関する見解が常に一致していたわけではありませんでした。特に、成長したメソジストの集まりが母体であるイングランド国教会から分離独立すべきかという問題においては、チャールズは教会との絆を重んじ、分離に強く反対の立場をとりました。この兄弟間の意見の相違は、メソジスト運動の歴史における重要な側面の一つです。

私生活では、チャールズは1749年4月8日、40歳の時に23歳のサラ・グウィンと結婚しました。サラは、ウェールズの裕福な地主マーマデューク・グウィンの娘で、彼女自身もハウエル・ハリスの働きによってメソジストに転向していました。サラは夫チャールズのブリテン島各地を巡る精力的な伝道の旅に同行し、彼の活動を支えましたが、チャールズが旅を終える1765年までその役割を果たしました。チャールズとサラの間には8人の子供が生まれましたが、残念ながら幼少期を生き延びて成人したのは3人でした。成人した息子たちのうち、チャールズ・ウェスレー・ジュニア（1757-1834）とサミュエル・ウェスレー（1766-1837）は、後に著名なオルガニスト、作曲家として音楽界で活躍しました。

チャールズ・ウェスレーの最も偉大な貢献は、その途方もない数の賛美歌創作にあります。彼は生涯で数千曲もの賛美歌の歌詞を書き上げたとされており、その多くは深い信仰体験に基づいた詩的な表現と、福音の真理を見事に捉えた内容を持っています。彼の作品は、メソジスト運動の拡大において、人々の信仰を養い、共同体を一つにする上で不可欠な役割を果たしました。今日でも世界中の多くの教会で歌われている「天（あめ）には栄え」（Hark! the Herald Angels Sing）をはじめとする彼の賛美歌は、時代を超えて人々の心に響き続けています。

チャールズは1765年に伝道の旅を終え、その後は主にロンドンで過ごしました。晩年も創作活動は続きました。彼の生み出した不朽の賛美歌は、クラシック音楽のみならず、特にゴスペル音楽の発展にも大きな影響を与えました。その音楽界への貢献を称え、1995年にはゴスペル・ミュージック・アソシエーションによりゴスペルの殿堂入りを果たしました。また、彼の息子サミュエル・ウェスレーも、自身の音楽的功績によって評価を受けています。

チャールズ・ウェスレーは、単なる説教者としてだけでなく、信仰を歌に乗せて人々に届けた稀有な才能を持つ人物でした。彼の残した数千曲の賛美歌は、メソジスト運動の精神を伝え、後のプロテスタント教会における賛美歌文化に計り知れない影響を与え続けています。

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