チャールズ・ルジャンドル

シャルル・ウィリアム・ジョセフ・エミール・ルジャンドル：波乱に満ちた生涯

シャルル・ウィリアム・ジョセフ・エミール・ルジャンドル (1830年-1899年) は、フランス生まれのアメリカ人軍人、外交官として、激動の19世紀を駆け抜けた稀有な人物です。ルジャンドル、リゼンドル、リセンドル、李仙得、李善得など、様々な呼び名で知られています。

フランスでの生い立ちと渡米

フランスのウランに生まれたルジャンドルは、ランス大学とパリ大学で学びました。彼の父、ジャン＝フランソワ・ルジャンドル＝エラルは、リヨンの美術学校の教授を務めた古典主義彫刻家でした。ルジャンドルは24歳の時、ニューヨークの著名な弁護士の娘クララ・ヴィクトリア・ミュロックとブリュッセルで結婚し、その後アメリカに移住、帰化しました。

南北戦争での活躍

1861年、南北戦争が勃発すると、ルジャンドルはアメリカ軍に入隊、第51ニューヨーク志願兵歩兵連隊少佐に任官しました。ノースカロライナでの戦闘やニューバーンの戦いなどに参加し、幾度となく負傷しながらも、勇敢に戦い続けました。1864年5月6日のヴァージニアでの戦闘では顔面に重傷を負い、左目と鼻を失うほどの重傷を負いましたが、それでもなお軍務に貢献しました。最終的に准将に名誉進級し、1864年10月4日に名誉除隊しました。

台湾での活動とローバー号事件

1866年、ルジャンドルは厦門の米国領事に任命されました。領事として、厦門、基隆、台北、淡水、高雄の五つの条約港を管轄しました。在任中、彼は年季奉公人の不正取引の抑制に尽力する一方、1867年のローバー号事件にも深く関わりました。この事件は、台湾原住民によるアメリカ船の乗員殺害事件であり、ルジャンドルは台湾当局への働きかけ、そして中国側の協力を得るべく奔走しました。彼は危険を顧みず台湾島に渡り、原住民の酋長と交渉、難破船乗員の安全を保証する条約締結に尽力しました。その後も、1871年の宮古島島民遭難事件にも対応するなど、台湾問題解決に大きな役割を果たしました。

日本での外交顧問

1872年、ルジャンドルは日本を訪れ、明治政府に台湾問題の武力解決を提唱しました。彼の提案は副島種臣外務卿の考えと一致し、ルジャンドルはアメリカ領事の職を辞し、明治政府の外交および軍事顧問として雇用されました。彼は1874年の台湾出兵の準備にも携わりましたが、アメリカ公使との意見対立や、職務放棄の嫌疑により、一時上海で収監されるなど、波乱の連続でした。しかしながら、彼の功績は認められ、外国人として初めて勲二等旭日重光章を授与されました。1875年に顧問を辞任した後も、大隈重信の個人的な顧問を務めました。

韓国での晩年

1890年、ルジャンドルは朝鮮王高宗の顧問となり、1899年9月1日に漢城（現在のソウル）で脳卒中により亡くなるまでその職に就きました。

家族と私生活

ルジャンドルは、日本滞在中に池田絲という女性との間に子供をもうけました。絲は松平春嶽の庶子で芸者でした。彼らの間に生まれた子供たちは里子に出され、長男は後に十五代目市村羽左衛門となりました。歌舞伎界の重鎮となった市村羽左衛門とルジャンドルとの血縁関係は、長い間秘匿されていましたが、後に明らかになりました。一方、アメリカ人の本妻との間にも息子がおり、彼は投資銀行で活躍しました。

著述活動とその後

ルジャンドルは『Progressive Japan』や『Notes of Travel in Formosa』などの著作を残しています。彼の個人的な資料はアメリカ議会図書館に所蔵されています。

ルジャンドルの生涯は、アメリカ、日本、台湾、そして韓国と、多様な文化圏にまたがる波瀾万丈なものでした。外交官として、軍人として、そして一人の人間として、彼の行動は、歴史に大きな足跡を残しています。彼の業績は、現代においても研究対象として高く評価されています。

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