チュニス征服 (1535年)

1535年 チュニス征服：ハプスブルク帝国による北アフリカの戦略的拠点攻略

1535年のチュニス征服は、神聖ローマ皇帝カール5世率いるハプスブルク帝国が、オスマン帝国の勢力下にあったチュニスを攻略した戦いです。この戦いは、地中海の覇権を巡るハプスブルク家とオスマン帝国の対立を象徴する出来事であり、その後の地中海世界の勢力図に大きな影響を与えました。

背景：オスマン帝国の台頭とハプスブルク家の対抗

16世紀初頭、オスマン帝国はスレイマン1世の治世下で地中海に進出し、北アフリカ沿岸を支配下に置いていました。バルバロス・ハイレッディン率いる海賊艦隊は、オスマン帝国の後援を受け、地中海各地で略奪行為を繰り返していました。1534年には、バルバロス・ハイレッディンがハフス朝の首都チュニスを占領し、アミールのハサン・ムハンマド6世を追放。これにより、オスマン帝国は地中海の重要な拠点を手に入れ、キリスト教勢力に対する脅威を高めました。

一方、当時ヨーロッパ最強の君主の一人であったカール5世は、オスマン帝国の勢力拡大を阻止するため、大規模な遠征軍を編成しました。彼は3万人の兵、74隻のガレー船、300隻の帆船からなる大艦隊を率い、チュニス奪還を目指しました。この遠征には莫大な費用が費やされ、その財源は新大陸から運ばれる金銀に依存していました。

戦闘の経過：ラ・グレット攻略とチュニス占領

1535年6月1日、カール5世はジェノヴァ艦隊とともにバルバロス・ハイレッディンの艦隊を破り、チュニスに隣接する港町ラ・グレット攻略にとりかかりました。キリスト教連合軍は大きな犠牲を払いつつも、ポルトガル旗艦ボタフォゴが港を封鎖していた防鎖を衝角で破壊し、港内から街に砲撃をかけたことで攻略に成功しました。その後、チュニスも占領され、ハフス朝のアミール、ハサン・ムハンマド6世が復位しました。

しかし、チュニス市内ではスペイン部隊による虐殺が行われ、多くのムスリム住民が犠牲となりました。バルバロス・ハイレッディンは、一部の部隊を率いてアルジェへと逃れました。

戦いの影響：地中海世界の勢力図の変化

チュニス征服は、カール5世の威信を高め、ハプスブルク家の地中海における影響力を強化しました。しかし、オスマン帝国のスレイマン1世は、この敗北を機にハプスブルク家に対抗するため、フランスとの同盟を模索するようになります。1536年には、フランス王フランソワ1世との間で対カール5世同盟が成立し、ヨーロッパの国際関係は複雑化していきました。

一方、バルバロス・ハイレッディンはアンナバに落ち延びた後、バレアレス諸島のマオーを襲撃し、6000人を奴隷としてアルジェに連れ去りました。彼はその後も地中海で活動を続け、オスマン帝国の海軍力を支え続けました。

その後：オスマン帝国の再征服とチュニスの変遷

1574年、オスマン帝国はチュニスを再占領し、再びその支配下に置きました。その後、チュニスは半独立状態のベグによって統治され、19世紀まで地中海で私掠活動を続けました。1881年には、フランスがチュニジアを保護国化し、オスマン帝国の影響力は完全に排除されました。

チュニス征服は、16世紀の地中海世界におけるハプスブルク家とオスマン帝国の覇権争いを象徴する出来事でした。この戦いは、その後のヨーロッパの国際関係や地中海の勢力図に大きな影響を与え、その歴史的意義は今日でも重要視されています。

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