チューブラー・ベルズ

チューブラー・ベルズ (Tubular Bells)

マイク・オールドフィールドが1973年に発表したソロ・アルバム『チューブラー・ベルズ』は、彼の名を一躍有名にした作品であり、同時にヴァージン・レコードの歴史の始まりを告げる重要な一枚です。当時、新興レーベルであったヴァージン・レコードの最初のアルバムとして、カタログ番号「V2001」と共にリリースされました。

制作の背景

ケヴィン・エアーズのグループ解散後、オールドフィールドはエアーズから譲り受けた2トラックのテープレコーダーで、ソロ作品の制作を開始しました。この簡素なレコーダーを改造し、多重録音を可能にしたことが、彼の音楽性を開花させる第一歩となりました。

デモテープ「Opus One」を聴いたリチャード・ブランソンは、オールドフィールドに自身のマナー・スタジオを1週間提供することを決意します。この期間中、オールドフィールドはほとんどのパートを一人で演奏し、多重録音を重ねました。初期はタイミングを合わせるのに苦労しましたが、メトロノームの音をマイクで拾い、ヘッドフォンで聴きながら演奏することで、この問題を克服しました。

最終日、アルバムのタイトルにもなった楽器チューブラーベルの使用を思いつき、ボンゾ・ドッグ・バンドのヴィヴィアン・スタンシャルのMCも録音されました。また、トラッド・ソング「セイラーズ・ホーンパイプ」もスタンシャルとの共演で録音されました。

「チューブラー・ベルズ（パート1）」の大部分を録音後、ブランソンはスタジオの空き時間をオールドフィールドに提供し、「パート1」のコーラス・パートやアコースティック・ギターのオーバーダビング、「パート2」の録音が行われました。「パート2」のエンディングには当初、スタンシャルと録音した「セイラーズ・ホーンパイプ」が組み込まれる予定でしたが、最終的には新しく録音し直したものが使用されました。

音楽的な評価と影響

1973年5月25日にリリースされた『チューブラー・ベルズ』は、全英アルバムチャートで初登場31位を記録し、その後も順位を上げ続け、最終的には1位を獲得しました。この時、オールドフィールド自身のセカンド・アルバム『ハーゲスト・リッジ』が1位から陥落しています。

BBCのDJ、ジョン・ピールはこのアルバムを高く評価し、自身の番組でAB面両方を放送しました。これがきっかけとなり、イギリスでの売り上げが急増しました。

アメリカでは、Billboard 200で最高3位を記録し、第17回グラミー賞では最優秀インストゥルメンタル作曲賞を受賞しました。

派生作品

「パート1」の冒頭は、映画『エクソシスト』のテーマ曲として使用され、シングルとしても発売されました。ただし、オリジナルバージョンではなく、別アレンジのものでした。

オールドフィールドは、以下のアルバムを『チューブラー・ベルズ』のシリーズ作品としてリリースしています。

ジ・オーケストラル・チューブラー・ベルズ (1975年)
チューブラー・ベルズII (1992年)
チューブラー・ベルズIII (1998年)
ザ・ミレニアム・ベル (1999年)
チューブラー・ベルズ2003 (2003年)

2009年には、オールドフィールド自身によるステレオ・リミックスが施された再発盤がリリースされました。

収録曲

1. チューブラー・ベルズ（パート1）
2. チューブラー・ベルズ（パート2）

ボーナス・トラック（2009年ヴァージョン）

1. マイク・オールドフィールズ・シングル
2. セイラーズ・ホーンパイプ（オリジナル・ヴァージョン）

参加ミュージシャン

マイク・オールドフィールド
リンゼイ・クーパー
ジョン・フィールド
ヴィヴィアン・スタンシャル
サリー・オールドフィールド
マンディ・エリス
サイモン・ヘイワース
トム・ニューマン
スティーヴ・ブロートン

『チューブラー・ベルズ』は、マイク・オールドフィールドの才能と革新性が結実した作品であり、プログレッシブ・ロックの金字塔として、今もなお多くの音楽ファンに愛され続けています。

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