チンチョーロのミイラ

チンチョーロのミイラ

チンチョーロのミイラ（スペイン語: momias chinchorro）は、南アメリカの北部チリで発見された古代のミイラ化した遺体であり、現存する中でも特に古い人為的ミイラの一つです。この文化は、他の地域と比べて、ふさわしい条件の下で死者の保存が行われていました。チンチョーロのミイラは、紀元前5050年までさかのぼることができ、古代エジプトでのミイラ化が始まった約2000年以上前にあたります。考古学的には、エジプトの最古のミイラが紀元前3000年頃であることからも、この文化の重要性が理解できます。

自然乾燥によるミイラ

これまでに発見された282体のチンチョーロのミイラのうち、約29%は自然乾燥によるものです。チリの北部、アタカマ砂漠では特殊な環境が形成されており、塩分が豊富な土壌は遺体の有機物を保存するのに不可欠です。この環境により、遺体は早くに脱水され、腐敗を免れることが可能になります。チンチョーロ人は、自然乾燥でミイラ化した遺体も包み、葦で包んだり副葬品とともに埋葬したりする独自の風俗を持っていました。

ブラックミイラとレッドミイラ

ブラックミイラは紀元前5000年から3000年にかけて製作され、遺体は解体され、骨と肉が丁寧に取り扱われました。この過程では、熱や灰を利用して骨が乾燥され、再構築される際に草や動物の毛が詰められました。一方、レッドミイラ（紀元前2500年～前2000年）では解体が行われず、身体に切れ込みを入れて内臓を取り出し、その後再度組み立てられる独自の技術が用いられました。これにより、遺体は元のサイズに戻され、特殊な材料で詰められたのです。

泥塗りミイラと包帯巻きミイラ

泥塗りという製作様式が見られるのは紀元前3000年から1300年にかけてで、これは環境の安定が影響していると考えられています。ミイラは自然乾燥だけでなく、粘土や石膏で表面を覆うことによっても完璧に保存されました。包帯巻きミイラの方法は、紀元前2620年から2000年にかけて見られ、独自の技法で製作された3体の幼児のミイラが確認されています。この技法はブラックミイラとレッドミイラの技術を融合させたもので、動物の皮膚や赤色の粘土が使用されました。

刺青と文化的意義

また、チンチョーロ文化の中では刺青も興味深い文化的要素であり、特に上唇の上に施された刺青が古さを物語っています。これは1430年以上前のものであり、アメリカ大陸で確認された最も古い刺青と言われています。これらの文化的伝統の保存状態は非常に良好であり、文化的証拠としても貴重な存在です。

世界遺産としての登録

チンチョーロ文化はその独特な死者への敬意や保存技術により、2021年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準には、消滅した文化の唯一の証拠や、発展された陸上または海上利用の際立った例としての重要性が含まれています。この遺産は、過去の人々と彼らの生活スタイルを理解するための貴重な資料であり、未来の研究においても重要な位置を占めています。

もう一度検索