チーム・ハース

チーム・ハース：アメリカからF1に挑んだ挑戦者

チーム・ハースは、1985年から1986年にかけてF1世界選手権に参戦した、アメリカ合衆国のレーシングチームです。北米のインディカーで成功を収めていたカール・ハースが、ベアトリス・フーズという大企業の支援を受け、F1への挑戦に乗り出しました。

しかし、チーム・ハースは、F1参戦において特異な状況にありました。ローラ名義でマシンを登録したため、公式にはコンストラクターとは認められませんでした。これは、ハースがローラ製レーシングカーの輸入ディーラーでもあったことに起因します。技術顧問にはローラ代表のエリック・ブロードレイが名を連ねていましたが、ローラ自体はチーム運営に直接関与していませんでした。

チームの運営は、F1経験豊富なテディ・メイヤーが率いました。メイヤーはマクラーレンでのチーム代表経験を持ち、カール・ハースの誘いを受けてチーム代表兼共同オーナーに就任しました。設計部門には、ウィリアムズで活躍したニール・オートレイとロス・ブラウンといった優秀な人材が集結しました。チームはイギリスにファクトリーを設立し、運営母体としてフォーミュラ・ワン・レースカー・エンジニアリング（FORCE）を設立しました。

パワープラントは、コスワースが開発したフォードV6ターボエンジンを採用。ドライバーには、1980年のF1ワールドチャンピオンであるアラン・ジョーンズを獲得。他にも、パトリック・タンベイやエディ・チーバーといったドライバーが起用されました。アメリカチームのF1参戦は久々であり、強力なスポンサー、名門エンジンサプライヤー、チャンピオン経験ドライバーという布陣は、F1界に大きな注目を集めました。

1985年シーズンは、フォードエンジンの完成が間に合わなかったため、ハートエンジンを搭載したマシンで参戦。結果は振るわず、多くのリタイアを喫しました。1986年シーズンは、2台体制でフル参戦。しかし、開幕前にメインスポンサーであるベアトリス・フーズが買収され、スポンサー契約が打ち切られるという大きなアクシデントに見舞われました。さらに、フォードエンジンの性能も期待外れでした。

厳しい状況の中、チームは旧型のハートエンジン搭載マシンと新型フォードエンジン搭載マシンを使い分けながら戦いました。タンベイは幾度か予選でシングルグリッドを獲得するなど、マシンのポテンシャルの高さを示しましたが、リタイアが続出。それでも、オーストリアGPとイタリアGPで入賞を果たし、コンストラクターズランキング8位という結果を残しました。

しかし、スポンサー撤退とコスワースとの関係悪化により、チーム・ハースは1987年シーズンへの参戦を断念。チームの設備や資材はブラバムのバーニー・エクレストンに売却されました。フォードGBAエンジンの使用権はベネトンに移り、チーム・ハースで活躍したエンジニアたちは、その後マクラーレンやベネトン、フェラーリなどで成功を収めました。チーム・ハースは短命に終わったものの、優れた人材を育成したチームとして、F1の歴史にその名を刻んでいます。

チーム・ハースの挑戦は、アメリカ勢によるF1参戦の歴史において重要な一ページであり、決して忘れてはならない存在です。彼らの技術力と努力は、後に多くのF1チームやドライバーの成功に貢献することになるのです。

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