ツァイゼ塩

ツァイゼ塩（Zeise's salt）

ツァイゼ塩は、化学式 K[PtCl3(C2H4)].H2O を持つ有機金属化合物で、白金を含んでいます。この化合物は、空気中で安定しており、特徴的な黄色を呈します。特に、η2-エチレンをリガンドとする錯体の一つです。ツァイゼ塩は通常、塩化スズを使った触媒反応によって、K2[PtCl4]とエチレンを原料として合成されます。

この化合物の分子量は368.61 g/molで、融点は220℃です。ツァイゼ塩の一水和物にはCAS登録番号16405-35-9が付けられ、無水塩には12012-50-9、その他の形態にも異なるCAS番号が存在します。

歴史

ツァイゼ塩は、有機金属化合物として最も古くから知られているものの一つです。[コペンハーゲン大学]]の教授ウィリアム・クリストファー・ツァイゼは、1820年代に塩化白金]と煮沸した[[エタノールとの反応を通じて、この物質を合成したとされています。当初はユストゥス・フォン・リービッヒなどの当時の著名な化学者から批判を受けることもありましたが、1868年にエチレンを含む化合物が実際に合成され、ツァイゼの提案が正しいことが証明されました。

ツァイゼ塩の独特な分子構造は、19世紀後半に多くの化学者を魅了しましたが、その構造が完全に解明されるのは20世紀のX線回折技術の進展を待つことになります。この化合物に関連する研究は、有機金属化学の分野で非常に活発に行われ、ハプト数などの新たな概念が生まれるきっかけともなりました。

関連化合物

ツァイゼ塩の[二量体]]として、塩化カリウムの脱離を経て得られる[{(η2-C2H4)PtCl2}2]が知られています。また、塩化白金]を1,5-シクロオクタジエンと反応させることで得られる”シクロオクタジエン-二塩化[[白金”も、白金とアルケンの化合物の中で広く利用されています。他にもエチレンを含む多くの化合物が合成されており、例えばエチレン-ビス-トリフェニルホスフィン-白金[(C6H5)3P]2Pt(H2C=CH2)では、白金が三配位状態でゼロ価を示しています。

構造

ツァイゼ塩やその関連化合物では、アルケンがメタル-アルケン結合の周囲を回転します。エネルギー障壁の解析によれば、大部分の金属とアルケンの間に形成されるπ結合はσ結合よりも弱いとされています。ツァイゼ塩のアニオンにおいては、全てのプロトンが等価であるため、核磁気共鳴分光法による回転障壁の測定は難しいですが、例えばCpRh(C2H4)2のような対称性の低いエチレン化合物では、その回転障壁値を測定することができます。

このように、ツァイゼ塩はその独自の構造や性質から、化学の発展に大いに寄与してきました。

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