ツァボライト

ツァボライト（Tsavorite）

ツァボライトは、ガーネットグループに属する灰礬柘榴石の一変種で、英語ではTsavoriteまたはグリーンガーネットと呼ばれています。化学組成はCa2Al(SiO4)3であり、主にバナジウムとクロムの微量元素によって美しい緑色が生まれています。

この宝石の発見は1967年に遡ります。当時、イギリスの宝石探鉱者であり地質学者のキャンベル・R・ブリッジズがタンザニアのマニャラ州シマンジロ地域の山中で緑色の灰礬柘榴石の鉱床を見つけました。この場所はKomolo村から約15km離れたLemshukoという地点で、彼が発見したツァボライトは非常に鮮やかな色合いと高い透明性を持つものでした。この発見は宝石業界の注目を集め、ブリッジズは石を輸出する計画を立てましたが、タンザニア政府からの許可は得られませんでした。

ブリッジズは、この鉱床が隣国のケニアにも広がっていると考え、探鉱を進めることにしました。1971年にはケニアで新たな鉱床を掘り当て、掘削の許可を獲得しました。ツァボライトはその当初、ほとんどの人に知られていなかったものの、1974年にティファニー社がこの宝石の販売キャンペーンを開始したことで、広く認知されるようになりました。

残念ながら、ブリッジズは2009年にツァボ・イースト国立公園の私有地で、彼とその息子が襲撃される事件に巻き込まれ亡くなりました。この事件は、彼の宝石鉱山の運営に関する数年間の争いに関係しているとされています。

「ツァボライト」という名称は、ティファニー社の社長であったヘンリー・プラットによって、ケニアにあるツァボ・イースト国立公園に由来して名づけられました。また、この宝石はタンザニアのマニャラ州や、マダガスカルのトゥリアラ州でも確認されています。さらに、パキスタンや南極のドロンニング・モード・ランドにも小規模な鉱床が見つかっているものの、宝石としての品質を持つ素材はまだあまり見つかっていません。

ツァボライトの宝石品質の素材はとても稀です。しかし、他の宝石とは異なり、ツァボライトは比較的大きなサイズの結晶が発見されています。特に注目すべきは、2006年末に発見された925カラット（約185グラム）の結晶で、この原石からは325カラット（約65グラム）のオーバル・ミックスカットの石が作られました。このサイズは、切子面があるツァボライトとしては世界でも有数のものです。また、同年初めには120.68カラット（約24.136グラム）のオーバル・ミックスカットの宝石も発見されています。

ツァボライトは新原生代における変成イベントの中で形成され、その過程では岩石が大規模な褶曲や再褶曲を経て変化します。その結果、ツァボライトの結晶内部には様々なインクルージョンが発生し、これがこの宝石の識別において非常に重要な特徴となります。ツァボライトはその独特の美しさと共に、歴史的な背景を持つ貴重な宝石です。

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