ツイスト・アンド・シャウト

ツイスト・アンド・シャウト：時代を超えた名曲の軌跡

「ツイスト・アンド・シャウト (Twist and Shout)」は、1961年にトップ・ノーツによって最初にレコーディングされた楽曲です。作曲はフィル・メドレーとバート・ラッセル。しかし、彼らのバージョンはチャート入りを果たせず、埋もれた存在でした。

トップ・ノーツのオリジナル

1961年2月23日、アトランティック・スタジオでレコーディングが行われました。プロデューサーはフィル・スペクター、編曲はテディ・ランダッツォが担当。リードボーカルはハワード・ゲイトンが務め、キング・カーティス（サックス）、バッキー・ピザレリ（ギター）、パナマ・フランシス（ドラム）といった実力派ミュージシャンがバックを務めました。バッキングボーカルにはクッキーズも参加しています。

音楽評論家のリッチー・アンターバーガーは、このバージョンを「単調で平凡なR&Bメロディーのラテン風レイブ」と評しています。作曲者の一人であるバート・バーンズは、このレコーディングとスペクターのプロデュースに不満を持っていたという記録が残っています。

アイズレー・ブラザーズによる大ヒットカバー

状況を一変させたのは、アイズレー・ブラザーズによるカバー版です。1962年5月にシングルとしてリリースされると、全英チャート42位、Billboard Hot 100で17位を記録。アイズレー・ブラザーズにとって初のトップ20ヒットとなり、「ツイスト・アンド・シャウト」自身も初めてチャートインを果たしました。

このバージョンはオリジナルよりもテンポを大幅に落とし、チャチャを思わせるリズムが特徴的です。ボーカルもアレンジされ、リードボーカルとハーモニーボーカルが掛け合うコールアンドレスポンス形式が用いられました。プロデュースはバート・ラッセル（バート・バーンズ名義）が担当しました。

アイズレー・ブラザーズ版　参加ミュージシャン

ロナルド・アイズレー - リードボーカル
オケリー・アイズレー - バッキングボーカル
ルドルフ・アイズレー - バッキングボーカル
キング・カーティス - サクソフォーン
エリック・ゲイル - ギター
トレイド・マーティン - ギター
コーネル・デュプリー - ギター
ポール・グリフィン - ピアノ
チャック・レイニー - ベース
ゲイリー・チェスター - ドラム

ビートルズの伝説的カバーとレコーディング秘話

ビートルズはアイズレー・ブラザーズのカバーを元に、1963年のデビューアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』に「ツイスト・アンド・シャウト」を収録しました。リードボーカルはジョン・レノンが担当。

1963年2月11日、EMIレコーディング・スタジオでのレコーディングは、レノンが風邪をひいていたというエピソードで知られています。牛乳と咳止めを飲んで挑んだレコーディングは、2テイク録音が行われ、レノンの声が枯れてしまった2テイク目ではなく、1テイク目が採用されました。

レノン自身は後年、このレコーディングについて「死にそうだった。歌い続けすぎて、声が紙やすりのようだった。情けなかった…。もっと上手く歌えたのに。でも今は気にならない。この曲を聴くと、僕が全力を尽くしていたのが分かると思う」と語っています。

ビートルズ版　参加ミュージシャン

ジョン・レノン - リードボーカル、リズムギター
ポール・マッカートニー - ベース、バッキングボーカル
ジョージ・ハリスン - リードギター、バッキングボーカル
リンゴ・スター - ドラム

ビートルズ版 チャート成績とその後

アメリカでは1964年3月2日にシングルとして発売され、Billboard Hot 100で4週連続2位を記録。ビートルズのカバー曲として唯一のミリオンセラーとなり、全米チャートでトップ10入りした唯一のカバー曲となりました。イギリスでは『プリーズ・プリーズ・ミー』に収録された後、EPとして再リリースされ、チャート1位を獲得。その後も、様々なコンピレーションアルバムに収録され続け、2010年にはiTunes Storeでの配信開始に伴い、再びチャート入りを果たしています。

ライブパフォーマンスでも定番曲となり、『エド・サリヴァン・ショー』出演時や、1964年から1965年の全米ツアーではオープニングナンバーとして演奏されました。

その他のアーティストによるカバー

「ツイスト・アンド・シャウト」は、ビートルズ以外にも多くのアーティストによってカバーされ続けています。代表的な例としては、以下のアーティストが挙げられます。

ソルト・ン・ペパ (1988年)
チャカ・デマス＆プライヤーズ (1993年、全英チャート1位)
ブッカー・T＆ザ・MG's
ブライアン・プール＆ザ・トレメローズ
ザ・フー
東京ビートルズ
シャングリラス
内田裕也・尾藤イサオ
バック・オーウェンズ
ママズ＆パパス
つんく♂
ザ・ヴァンプス

これらのカバーを通して、「ツイスト・アンド・シャウト」は時代を超えて愛され続ける、普遍的な魅力を持つ楽曲であることが証明されています。 R&Bからロック、レゲエまで、様々なジャンルで解釈され、それぞれのアーティストの個性と音楽性を反映したアレンジが施され、これからも多くのアーティストにカバーされることでしょう。 その歴史と多様なアレンジは、音楽史において重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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