ツォウ語

ツォウ語の概要

台湾の先住民、ツォウ族によって話されているツォウ語は、大きく北ツォウ語と南ツォウ語の2つの語群に分類されます。北ツォウ語は一般的に「ツォウ語」と呼ばれ、漢字では「鄒語」または「曹語」と表記されます。一方、南ツォウ語はカナカナブ・ツォウ語とサアロア・ツォウ語の2つの方言から構成されます。

北ツォウ語の分類と歴史

北ツォウ語は、かつて特富野社、達邦社、伊姆諸社、魯富都社の4つの地域の方言群に分けられていましたが、伊姆諸社と魯富都社は20世紀初頭に廃社となり、住民は近隣の集落に分散したため、現在ではこれらの地域の方言は消失したと考えられています。現在、北ツォウ語は久美（望美）、特富野、達邦の方言群に分類され、方言間の差異は比較的少ないとされています。

ツォウ語研究の先駆者たち

1920年代後半、ロシアの言語学者ニコライ・ネフスキーは台湾でツォウ語の調査を行いました。彼は特富野社の鄒族青年、高一生（ウォンギ・ヤタユンガナ）とその兄の協力を得て、約1ヶ月にわたる現地調査を実施。日本語を媒介としたコミュニケーションを通じて、15のツォウ語の故事をラテン文字と国際音声記号で記録し、ツォウ語の発音、文法、単語、そしてツォウ族の民族文物30点を収集しました。ネフスキーはこれらの調査結果を基に、1935年に『臺灣鄒族語典』を出版。これはツォウ語を専門的に言語学的に扱った最初の研究として高く評価されています。しかしながら、ネフスキーは1937年にソ連政府によって処刑され、高一生も1954年に国民政府によって処刑されています。彼らの犠牲の上に成り立ったツォウ語研究は、貴重な言語資料として現在も活用されています。

ツォウ語の音韻体系

ツォウ語の音韻体系の特徴として、喉音、舌根音、舌面音が少ないことが挙げられます。一方で、舌尖音と唇音は比較的発達していると言えるでしょう。ツォウ族の祭典で歌われる祭歌は、古典的なツォウ語の音韻を現在に伝えていると考えられています。これらの祭歌は、ツォウ語の言語学的調査において重要な資料となります。

まとめ

ツォウ語は、その歴史、多様な方言、そして言語研究の歴史を通して、多くの興味深い側面を見せてくれます。限られた研究資料ながらも、ツォウ語の豊かな表現力や、その背後にあるツォウ族の文化を垣間見ることができます。今後の更なる研究によって、ツォウ語の理解が深まり、台湾の先住民言語の多様性を保全していくことが重要です。ツォウ語の研究は、単なる言語学的研究にとどまらず、ツォウ族の文化と歴史を理解する上で欠かせないものです。ネフスキーと高一生の功績を称えつつ、ツォウ語のさらなる研究と保護に繋げていくことが必要です。

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