ツバクロザメ

ツバクロザメ（燕鮫） Carcharhinus oxyrhynchus

ツバクロザメはメジロザメ科に分類されるサメで、主に南米の北東部、特にトリニダード島やガイアナ、スリナム、ブラジル北部の浅い海域に生息しています。全長はおおよそ1.5メートルで、特徴的な長い吻と小さな眼を持ち、また大きな胸鰭が印象的です。水質としては濁った水を好む傾向がありますが、淡水には生息できません。

ツバクロザメは小魚を主な餌としており、繁殖は胎生で行われます。繁殖期は雨季に当たり、雌は一度に2から8匹の仔魚を産むことができます。人間に対しては無害であり、通常は海の生態系の中で重要な役割を果たしていますが、近年急速に個体数が減少しています。国際自然保護連合（IUCN）においては、この種の保全状況を「絶滅寸前」と評価しています。

分類

ツバクロザメは1839年にドイツの生物学者によって最初に記載されました。彼が用いた種名「oxyrhynchus」は、古代ギリシャ語の「尖った」を意味する「oxys」と「吻」を意味する「rhynchos」に由来します。その後、さまざまな分類が試みられましたが、最近の研究により、Carcharhinus属、すなわちメジロザメ属に分類されることが有力視されています。

分布

このサメは主に南米北東部の沿岸域に分布しており、出没するのは深さ4から40メートルの範囲です。雌は雄よりも深い水域に生息することが多く、特に塩分濃度が20から34‰の環境を好みます。また、雨季には沖合に移動する傾向があり、潮の変動にも適応しています。

形態

ツバクロザメの最も顕著な特徴は、その長くて平たい吻です。吻の形状により、視覚よりも触覚や電気受容器に依存することが可能となっており、これにより濁った水の中でも小魚を捕らえる能力が発揮されています。歯は細く、鋸歯状で、獲物を効率的に捕食するための構造を持っています。

体形は頑丈で、特に胸鰭は目立つ特徴です。全体的には灰色の体色をしており、腹面は明るい色合いです。最大で全長は2.4メートル、体重は13キログラムに達することもあります。

生態

ツバクロザメは、他のサメと共に生息することが多く、特にウチワシュモクザメと競合することがしばしばあります。小魚を主に捕食し、その捕食方法は長い吻と緻密な歯のおかげで優れています。繁殖方法は胎生であり、妊娠期間は約1年ですが、出産は雨季に合わせる傾向があります。この種の性成熟には雄で5から6年、雌で6から7年がかかります。

人との関係

ツバクロザメは人に危害を加えることはなく、漁業においては主に少数が伝統的な方法で捕獲される程度です。ただし、近年の環境変化や乱獲により、個体数は著しく減少しています。特にブラジルでは90%を超える減少が報告されています。IUCNは、この種を保護するために早急な対策が求められていると警告しています。水域の管理や漁業の監視が、ツバクロザメの保護には不可欠です。

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