ツルツゲ

ツルツゲ（蔓黄楊）

ツルツゲ（学名: Ilex rugosa）は、モチノキ科モチノキ属に分類される常緑性の低木です。亜高山帯から高山帯にかけての針葉樹林の林床に生育する高山植物として知られています。

特徴

ツルツゲは、地表を這うように生長し、その茎は20cmから50cmほどの長さに達します。茎には稜があり、細かい毛状の突起が見られます。葉は互生し、2mmから4mm程度の短い葉柄を持ちます。葉身は厚く、1.5cmから4cmの長さ、0.5cmから1.3cmの幅で、狭長楕円形から長楕円形をしています。葉の先端はやや尖り、基部は鋭い形状です。葉の両面には毛がなく、縁には粗い鋸歯があります。葉の表面には脈がくぼんでおり、しわのような模様が見られ、裏面の脈は隆起しています。

花期は6月から8月にかけてで、雌雄異株です。緑色がかった白色の4弁花を咲かせます。雄花は1個から5個がまとまって集散状に付き、雌花は1個から3個が葉腋に付きます。果実は直径約6mmの球状で、秋には赤く熟し、中に4個の種子を含んでいます。

種小名の rugosa は、ラテン語で「しわの多い」という意味を持ち、葉の表面に見られる特徴的なしわに由来します。

分布と生育環境

ツルツゲは、本州の東北地方、関東地方、中部地方に分布しており、亜高山帯から高山帯にかけての針葉樹林内の林床に生育します。

シノニム

ツルツゲには、以下のシノニムがあります。

Ilex rugosa F.Schmidt var. vegeta H.Hara
Ilex rugosa F.Schmidt var. hondoensis T.Yamaz.
Ilex rugosa F.Schmidt f. vegeta (H.Hara) H.Hara

下位分類

ツルツゲには、いくつかの変種や雑種が知られています。

エゾツルツゲ（マルバツルツゲ） (Ilex rugosa F.Schmidt var. rugosa)：葉が大きく、北海道、千島南部、樺太に分布します。ただし、YListでは標準名としては削除されています。
ホソバツルツゲ (Ilex rugosa F.Schmidt var. stenophylla (Koidz.) Sugim.)：葉が細く、中部地方南部、紀伊半島、四国に分布し、中部地方中部、東北地方南部にも分布します。ツルツゲとの中間型も見られますが、基本種と区別しない考え方もあります。
オオツルツゲ (Ilex × makinoi H.Hara)：ツルツゲとヒメモチの雑種と考えられており、ツルツゲに比べて全体的に大型で、東北地方にまれに見られます。

参考文献

佐竹義輔他編『日本の野生植物 木本Ⅱ』（1989年）平凡社
豊国秀夫編『山溪カラー名鑑 日本の高山植物』（1988年）山と溪谷社
* 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）

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