ヒメモチ

ヒメモチ（姫黐）

ヒメモチ（学名：Ilex leucoclada）は、モチノキ科モチノキ属に分類される常緑低木の一種です。特に積雪地帯への適応が見られ、その生態と特徴は、厳しい自然環境の中で生き抜く植物の知恵を物語っています。

特徴

ヒメモチは、雪の重みに耐えるため、高さは通常1m程度に留まり、幹はしなやかです。葉は互生し、長さ0.8-1.5cmの葉柄を持ちます。葉身は厚く、長楕円形をしており、先端はやや鈍く、基部は葉柄に向かって細くなっています。大きさは長さ5-15cm、幅1.5-4cm程度です。葉の両面は無毛で、縁は全縁が一般的ですが、稀に上部に細かい鋸歯が見られることがあります。

花期は6月から7月にかけてで、雌雄異株です。緑色がかった白色の4弁花を咲かせます。果実は10月から11月頃に赤く熟し、直径約1cmの球状になります。この赤い果実は、翌年の花期まで見ることができ、雪景色の中で鮮やかな彩りを添えます。

分布と生育環境

ヒメモチは、北海道の西南部から本州の東北地方、北陸地方、そして山陰地方にかけての日本海側に分布しています。多雪地のブナ林などの林床に自生し、ユキツバキ、ハイイヌガヤ、ヒメアオキ、エゾユズリハ、ツルシキミといった、日本海要素を持つ常緑地這植物と共に見られることが多いです。

これらの植物群は、積雪という共通の環境要因によって結びつけられており、ヒメモチもその一員として、独自の生態系を形成しています。

雑種

ヒメモチは、他の植物との間で自然交雑を起こすことがあります。その一例が、オオツルツゲ（Ilex × makinoi H.Hara）です。これはヒメモチとツルツゲの雑種と考えられており、ヒメモチよりも小型で、ツルツゲよりは大型という中間的な特徴を持ちます。オオツルツゲは、東北地方で稀に観察されることがあります。

参考文献

佐竹義輔 他 編『日本の野生植物 木本II』平凡社、1989年。
福嶋司; 岩瀬徹 編『図説 日本の植生』朝倉書店、2005年。ISBN 9784254171211。
* 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）

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