ツルドクダミ

ツルドクダミ（蔓蕺草）とは

ツルドクダミ（学名: Reynoutria multiflora）は、中国を原産とするタデ科のつる性多年草です。別名としてカシュウ（何首烏）とも呼ばれ、これは漢名の「何首烏」を日本語読みしたものです。和名はこの植物の葉がドクダミに似ており、つる性であることに由来しますが、ドクダミとは科が異なる別種です。

特徴

ツルドクダミは、日本においては本州から沖縄まで広く分布する帰化植物です。山野や市街地周辺の空き地、道端、生け垣などでよく見られます。

つる性: 無毛で木質化するつるは、2m以上にも伸び、他の植物などに巻き付いて成長します。地下には球状の塊茎があります。
つるの巻き方: 上から見て右巻き（S巻き）と左巻き（Z巻き）の両方が存在するのが特徴です。
繁殖力: 非常に繁殖力が旺盛で、枝分かれしながら広範囲に広がります。
葉: 長い葉柄を持つ互生葉で、葉身は卵形から広卵形、または心臓形で、先端が尖っています。葉の形はドクダミに似ていますが、ドクダミのような匂いはありません。葉は濃緑色で、表面は無毛で、やや厚みがあります。
托葉鞘: 葉柄の基部近くには、短い鞘状の托葉（托葉鞘）があり、茎を取り巻いています。托葉鞘は淡褐色の膜質です。
花: 秋（8～10月）に、円錐状の総状花序に緑白色の小さな花を多数咲かせます。花序の枝には細かい毛が密生しています。花弁のように見えるのは5裂した萼片で、外側の3枚は背部が竜骨状になります。雄しべは8個、雌しべは1本で、花柱は3本に分かれます。
果実: 痩果で、萼が発達して翼状になり、痩果を包み込んで茎から垂れ下がります。痩果は3稜形で、光沢のある黒色をしています。

利用

ツルドクダミの地下にある塊根は、漢方薬の生薬として「何首烏（かしゅう）」と呼ばれます。古くから不老長寿の薬として、滋養強壮のために用いられてきました。また、髪を黒くする効果があるとされ、「烏」の字が使われています。

何首烏: 生の何首烏は潤腸、瀉下、消炎作用があり、熱加工した製何首烏は肝腎を補う作用があります。ただし、鉄器での調理や動物の血にさらすこと、ネギやニンニクとの同時摂取は禁忌とされています。
薬効: 塊根を細かく刻んで天日干ししたものを煎じて服用すると、体を温め、若白髪、脱毛、便秘、疲労倦怠に効果があるとされています。
夜交藤: つるは「夜交藤（やこうとう）」と呼ばれ、不眠症の治療に使われてきました。

歴史

日本では、江戸時代と近年になって漢方薬として栽培されていましたが、一部が野生化しています。東京都心部でも見られるのは、かつて大名屋敷などで栽培されていたものが逸出したと考えられています。

注意点

ツルドクダミと名前の似たニガカシュウという植物がありますが、こちらはヤマノイモ科の植物で、全くの別種です。また、韓国で使われる「白首烏（ペクスオ）」は、キョウチクトウ科のコイケマという植物であり、ツルドクダミとは異なります。

まとめ

ツルドクダミは、その繁殖力の強さから身近に見られる植物でありながら、漢方薬としての重要な役割も担っています。その特徴的なつるや葉、花、そして薬効について知ることで、自然の恵みをより深く理解することができるでしょう。

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