ツルマメ

ツルマメ（Glycine soja）

ツルマメは、マメ科ダイズ属に分類される一年生のつる植物で、別名ノマメとも呼ばれます。ダイズの原種と考えられており、日本の各地をはじめ、朝鮮半島、中国、ロシアなど東アジアに広く分布しています。日当たりの良い野原や道端に自生し、他の植物に絡みつきながら成長する姿が見られます。

特徴

• - 形態:

つる状の茎は細長く、1mから4mほどに成長します。他の植物に右巻きに絡みつき、全体に茶褐色の毛が密生しています。葉は互生し、3枚の小葉からなる複葉です。小葉は披針状の長卵形、長楕円形、披針形など様々な形があり、表面と裏面に毛が生えています。夏から秋にかけて、葉腋から房状の花序を出し、赤紫色の蝶形の花を咲かせます。稀に白い花も見られます。果実はダイズによく似た豆果で、黄褐色の毛が密生しており、中に2個から4個の種子が入っています。

• - 分布:

日本（本州、四国、九州、沖縄）、朝鮮半島、中国、ロシアのウスリー川・アムール川沿岸地域に分布。

• - 生育環境:

日当たりの良い野原や道端などのつる性植物として生育。

• - 利用:

種子は食用になります。

ダイズとの関係

ツルマメはダイズの近縁種であり、原種であると考えられています。古代から栽培され、品種改良されたものが現在のダイズになったと言われています。しかし、ツルマメは品種改良されていないため、莢の成熟が不揃いであるなど、農業的な特性はダイズに劣ります。

ツルマメはダイズとの交雑が可能であり、ダイズの品種改良に利用されることがあります。例えば、子実成分や耐病性などの改良を目的に、ツルマメの持つ様々な特徴がダイズに導入されています。しかし、ダイズとの雑種には、蔓化や割莢などのツルマメ由来の不良形質が現れやすく、これらの形質を取り除くことが難しいため、遺伝資源としての利用には課題も残されています。

その他の特徴

種子中の貯蔵タンパク質含有量を増加させる遺伝子や、抗酸化作用を持つサポニンの多い系統などが発見されています。一方で、種子中のイソフラボン含有量はダイズに比べて少ないことが知られています。

縄文時代の遺跡からツルマメの種子圧痕が発見されており、縄文時代前期から利用されていた可能性が指摘されています。

参考文献

• - 内藤俊彦『秋の花』北隆館〈フィールド検索図鑑〉、1995年
• - 谷川栄子『里山のつる性植物 観察の楽しみ』NHK出版、2015年
• - 山田孝彦、山津京子『万葉歌とめぐる野歩き植物ガイド』太郎次郎社エディタス、2013年

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