ツレがうつになりまして。

ツレがうつになりまして。

『ツレがうつになりまして。』は、漫画家・細川貂々が自身の体験を基に描いたコミックエッセーです。2006年に幻冬舎から出版され、続編や完結編も発表されました。うつ病を患った夫（ツレ）との日々を、ユーモラスかつ温かい視点で描き出し、多くの読者の共感を呼びました。

概要

物語は、エリートサラリーマンだった夫が「死にたい」と訴える場面から始まります。妻である作者は、夫のうつ病と向き合いながら、日々の生活を模索していきます。作品の特徴は、うつ病を「宇宙カゼ」と表現したり、抑うつ状態をキャッチするアンテナが頭に現れるなど、独特な描写を取り入れている点です。また、自殺未遂や症状の改善、悪化といった出来事を、決して重苦しくなく、柔らかな絵のタッチで表現していることも魅力の一つです。

作者自身、当初はうつ病に対して「精神的に弱い人がなる」「神経症のようなもの」といった誤った認識を持っていました。しかし、夫の病気をきっかけに、周囲の知識不足や偏見に気づき、自身の体験を広く社会に伝えたいと考えるようになります。経済的な苦境も重なり、出版社への企画持ち込みを決意。当初は「暗い」という理由で断られることもありましたが、最終的に幻冬舎での発売が決まり、75万部を超えるベストセラーとなりました。

テレビドラマ

2009年には、NHK総合「金曜ドラマ」枠でテレビドラマ化されました。藤原紀香が妻役、原田泰造が夫役を演じ、原作の雰囲気を大切にしながらも、ドラマならではの脚色が加えられています。精神科医の野村総一郎が監修を務め、医療的な側面からも正確な描写がなされました。

映画

2011年には、宮﨑あおいと堺雅人を主演に迎え、映画化されました。監督は佐々部清。映画では、うつ病に苦しむ夫と、それを支える妻の姿を、より深く掘り下げています。宮﨑あおいと堺雅人の繊細な演技が光り、観る者の心を揺さぶる作品となっています。医療監修は精神科医院長の五十嵐良雄が担当し、原作者夫妻もカメオ出演しています。

映画は、「ガンバらないぞ!」「すこやかなる時も、病める時も、君と一緒にいたい。」というキャッチコピーが象徴するように、うつ病と向き合いながらも、前向きに生きる夫婦の姿を描いています。全国222スクリーンで公開され、初登場第4位を記録。金鶏百花映画祭外国語最優秀作品賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ました。宮﨑あおいは、この作品で第24回日刊スポーツ映画大賞 主演女優賞と第35回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞を受賞しています。

ストーリー（映画）

几帳面な夫・幹夫は、ある朝突然「死にたい」と呟きます。病院で診察を受けた結果、心因性うつ病と診断され、休職を余儀なくされます。漫画家である妻・晴子は、夫の病気を受け止め、支えようと決意します。夫は退職後、主夫となり、家事に奮闘する一方、晴子も漫画家として仕事に励みます。しかし、連載打ち切りや経済的な問題など、様々な困難が二人を襲います。それでも、夫婦は互いを支え合い、「ガンバらないぞ」と誓いながら、前向きに生きていくことを決意します。

登場人物（映画）

髙崎晴子（ハルさん）： 宮﨑あおい
売れない漫画家。夫のうつ病を支えながら、自身の仕事にも奮闘する。
髙崎幹夫（ツレ）： 堺雅人
几帳面な性格のエリートサラリーマンだったが、うつ病を発症し、主夫となる。

『ツレがうつになりまして。』が描くもの

『ツレがうつになりまして。』は、うつ病という深刻なテーマを扱いながらも、ユーモアと愛情に満ちた作品です。作者自身の体験に基づいているため、リアリティがあり、読者の心に深く響きます。また、うつ病に対する誤解や偏見をなくし、理解を深めるきっかけとなる作品としても高く評価されています。

この作品は、うつ病に苦しむ人々だけでなく、その家族や友人にとっても、希望と勇気を与えてくれるでしょう。「ガンバらないぞ」というメッセージは、現代社会を生きる私たちにとって、大切な心の持ち方を教えてくれます。

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