ツヴィンガー宮殿

ツヴィンガー宮殿：ドレスデンを彩るバロック様式の傑作

ドイツ、ザクセン州の州都ドレスデンに位置するツヴィンガー宮殿は、バロック様式を代表する建築物として世界的に知られています。宮殿の中庭には美しい庭園が広がり、現在は美術館として活用され、多くの来場者で賑わっています。

ツヴィンガー宮殿の歴史：城壁の跡地から芸術の殿堂へ

ツヴィンガーという名前は、中世のドレスデン城壁拡張工事の際に、旧城壁と新城壁の間にできた空地を指していました。12世紀に築かれたドレスデン城壁は、15世紀に拡張され、その際に生まれたこの場所は庭園として利用されるようになりました。16世紀後半には城壁の整備が進み、ツヴィンガー宮殿建設の基礎となる敷地が整えられていきました。

しかし、宮殿建設が始まったのは17世紀末のことです。ザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世（アウグスト強健王）が、木造建築が中心であった当時のドレスデンの街に、新たな息吹を吹き込むため、この庭園に石造りの宮殿を建設することを計画しました。

1709年に始まった宮殿建設は、建築家ダニエル・ペッペルマンを中心に進められました。ペッペルマンは、設計にあたり、プラハ、ウィーン、フィレンツェ、ローマなどを訪れ、建築技術や様式を研究。さらに、パリのベルサイユ宮殿も視察しています。これらの経験が、ツヴィンガー宮殿のデザインに反映されています。

1711年に着工した宮殿は、1719年に落成を迎えましたが、その後も1728年まで工事が続けられました。数多くの彫刻で飾られた、華麗なバロック様式の宮殿は、完成すると瞬く間にドイツの建築史上に名を残す傑作となりました。その後、フリードリヒ・アウグスト1世の後継者であるフリードリヒ・アウグスト2世は、ツヴィンガー宮殿のエルベ川側にホフ教会を建設し、建築群をさらに発展させました。

19世紀に入ると、宮殿は選帝侯のコレクションを収蔵する場所として整備され、美術品の展示が始まりました。1869年の火災で焼失した宮廷歌劇場の再建も、建築家ゴットフリート・ゼンパーによって行われ、ゼンパー・オーパーが建設されました。

第二次世界大戦中のドレスデン爆撃では、ツヴィンガー宮殿も大きな被害を受けました。戦後は、宮殿の修復作業が続けられ、1951年には中庭が公開されました。修復作業は長年にわたり続けられ、1963年には戦前の姿にほぼ復元されました。しかし、ゾフィー教会は1962年に取り壊されています。2002年にはエルベ川の大洪水により、再び甚大な被害を受けました。

日本のツヴィンガー宮殿：有田ポーセリンパーク

古伊万里（江戸時代の有田焼）がマイセン焼に大きな影響を与えたことを記念して、1993年に佐賀県有田町にツヴィンガー宮殿を再現した「有田ポーセリンパーク ツヴィンガー宮殿アートギャラリー」が開館しました。これは、ドレスデン市当局の協力のもと実現したプロジェクトです。

再現されたのは、ツヴィンガー宮殿の王冠門部分のみですが、日本の博物館法に定める博物館相当施設として認可されています。当初は、その他の部分の増築計画もありましたが、バブル経済崩壊の影響で頓挫しました。

ツヴィンガー宮殿：現在

現在、ツヴィンガー宮殿はドレスデン美術館の主要な施設として機能しており、アルテ・マイスター絵画館など、数々の美術館や博物館がその中に収められています。数々の修復を経て、その美しい姿は今もなお、多くの観光客を魅了し続けています。歴史と芸術が融合したこの宮殿は、ドレスデン、そしてドイツを代表する観光スポットとなっています。

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