ティグラト・ピレセル1世

ティグラト・ピレセル1世：中アッシリア王国を揺るがした王

ティグラト・ピレセル1世（在位：紀元前1115年 - 紀元前1077年）は、中アッシリア王国時代のアッシリア王であり、アッカド語ではトゥクルティ・アピル・エシャラと表記されます。その名は「我が頼りとするはエシャラの息子」を意味し、彼の治世はアッシリアの拡大と苦難の時代でした。

領土拡大と征服

アッシュール・レシュ・イシ1世の息子として生まれたティグラト・ピレセル1世は、即位後わずか5年で目覚ましい軍事的な成功を収めます。アナトリアのミタンニ故地に割拠するフルリ人の小国群を征服し、さらにユーフラテス川を越えて地中海へと軍を進めました。アッシリアの王が地中海に到達したのは、彼の時代が初めてです。また、カッパドキア地方のキリキア人をも攻撃し、征服しました。これらの功績から、彼は「42の国を征服した」と記録されています。

さらに、ティグラト・ピレセル1世はイシン第2王朝（バビロン第4王朝）のマルドゥク・ナディン・アヘ王と戦い、これを破ってバビロニア北部を獲得しました。これにより、アッシリアの影響力は南へと拡大しました。

中期アッシリア法典

彼の時代には、「中期アッシリア法典」が作成されたとされています。この法典は、中アッシリア時代のアッシリア社会を知る上で非常に重要な情報源であり、特に女性に関する規定が多いことで知られています。法典の内容からは、当時の社会構造や価値観を垣間見ることができます。

相次ぐ苦難と暗殺

しかし、ティグラト・ピレセル1世の治世は、順風満帆ではありませんでした。この頃から各地で大規模な飢饉が発生し、それに伴いアラム人が侵入し、国内は混乱しました。彼は、この事態に対処するため、たびたび西方遠征を行いましたが、大きな成果があったのかは定かではありません。このアラム人の侵入は、旧約聖書以外の史料でアラム人について記録されたものとしては最古のものとされています。

紀元前1077年、ティグラト・ピレセル1世は暗殺され、その波乱に満ちた生涯を終えました。その後、アシャレド・アピル・エクルが王位を継承しました。

ティグラト・ピレセル1世の治世は、アッシリアの領土拡大と社会の変容、そして苦難が交錯した時代でした。彼の業績と直面した課題は、中アッシリア王国の歴史を深く理解するための重要な手がかりとなります。

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