ティタノコリス

ティタノコリス

ティタノコリス（Titanokorys）は、約5億年前のカンブリア紀中期に生息していた、ラディオドンタ類に属する絶滅した節足動物です。カナダのブリティッシュコロンビア州にある有名なバージェス頁岩からその化石が発見されました。この動物は、特に頭部を覆う巨大で特徴的な三叉状の甲皮によって知られています。推定全長は約50センチメートルに達し、カンブリア紀における最大級の捕食動物の一つであったと考えられています。

名称について

学名「Titanokorys」は、古代ギリシャ語の「Titans」（巨体を持つ神々）と「Korys」（ヘルメット）を組み合わせた「巨大なヘルメット」を意味し、その巨大な頭部甲皮に由来します。模式種ティタノコリス・ガイネシ（Titanokorys gainesi）の種小名「gainesi」は、化石発掘に貢献したロバート・R・ゲインズ氏への献名です。発見当初、その形状から研究者たちに「スペースシップ」、さらに巨大なものは「マザーシップ」というニックネームで呼ばれました。

化石と発見

ティタノコリスの化石は、バージェス頁岩のマーブル・キャニオンとトックム・クリーク（約5億1,000万〜5億500万年前）からのみ発見されています。現在までに12点の標本が見つかっていますが、全身化石はなく、見つかっているのは脱皮殻とみられる頭部の硬組織（甲皮、前部付属肢、口器の歯）の集合体や、単離した甲皮のみです。これらの標本は全てロイヤルオンタリオ博物館に収蔵されています。カンブロラスターと共に保存されている化石もあります。ティタノコリスは2018年に発見されましたが、当初は巨大なカンブロラスターと見なされていました。その後の詳細な研究により別属と判断され、2021年に新属として正式に記載されました。

形態の特徴

ティタノコリスの形態は、知られている頭部の硬組織に基づいて推測されます。特徴的なのは、発達した3枚の頭部甲皮です。これらはほぼ同じ長さで、表面に筋とこぶが見られます。特に背側の甲皮は縦長の楕円形で、縁は鋸歯状のこぶがあり、先端部は中央が最も突出した三叉状です。後端部は幅広く、短い後側方突起を持ちます。甲皮の縁には、おそらく複眼が収まっていた眼窩切痕があります。左右の甲皮は幅狭いしずく型で、先端には腹側に棘を持つ連結部があります。

口のすぐ前には、熊手状の短い一対の前部付属肢がありました。これは6つの肢節からなり、続く5節の腹側には非常に長い5本の内突起があり、それぞれの前縁に長い分岐が密に並んでいます。これらの内突起と分岐は先端に向かって内側に湾曲し、左右の付属肢を合わせることで、餌を捕らえる籠状の構造を形成したと考えられます。この付属肢はカンブロラスターのものとよく似ていますが、内突起の分岐がティタノコリスの方が顕著に長い点で区別されます。その他の知られる構造としては、口器の歯の一部や、櫛状の鰓の断片があります。眼、胴体、鰭は化石としては見つかっていません。

大きさ

ティタノコリスの全身は不明ですが、知られる構造だけでもカンブリア紀の動物としては巨大です。特に甲皮は17〜27センチメートルに達し、バージェス頁岩の単体化石としては最大級です。他のフルディア科の比率から、全長は約50センチメートルと推測されます。これは、同時期のアノマロカリスやアンプレクトベルアといった最大級のラディオドンタ類に匹敵する大きさです。

生態

ティタノコリスは、遊泳底生性（底層近くを泳ぐ）であったと考えられています。捕食方法としては、熊手状の前部付属肢で海底の堆積物を探り、潜む底生生物を篩い分けて捕食する「堆積物篩い分け捕食者」であったと推測されます。巨大な甲皮で堆積物を掘り起こし、付属肢で餌を捕らえた可能性が考えられます。前部付属肢の分岐が密であることから、微小な底生動物を主に捕食していた可能性が示唆されています。化石がカンブロラスターと共に発見されることから、同じ地域に生息していたことがわかります。体格差（ティタノコリス約50cm、カンブロラスター約30cm）により、より大きな餌を狙うことで競争を避けていたか、あるいは同じ餌を巡って競争していた可能性があります。

分類

ティタノコリスはラディオドンタ類の中のフルディア科に分類されます。系統解析では、カンブロラスター、コーダティカリスなどと共に、フルディア科の中で派生的なグループの一つと見られています。カンブロラスターとは形態がよく似ていますが、特に甲皮の形状で区別され、現在の分類では別の属とされています。現在、ティタノコリス属として正式に記載されているのは、バージェス頁岩から発見された模式種ティタノコリス・ガイネシのみです。

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