ティッチボーン事件

ティッチボーン事件

ティッチボーン事件（ティッチボーンじけん、英: Tichborne case）は、1860年代から1870年代にかけてイギリスで発生した著名な事件です。この事件は、海難事故で行方不明となった準男爵の相続人を名乗る人物の真正性について、世間の注目を集めました。

背景

ティッチボーン家は、ノルマン・コンクエストの時代からハンプシャー州オールズフォード近郊に領地を持つカトリック信徒の旧家です。この家系は1621年に準男爵位を得ました。1862年6月、10代準男爵のジェイムズが亡くなった際、相続権は本来長男のロジャーが持つべきものでしたが、ロジャーは1854年の南アメリカ沖での海難事故で亡くなったとされていました。そのため、弟のアルフレッドが相続しました。

しかし、未亡人のレディ・ヘンリエッタ・ティッチボーンは、息子の死を信じることができず、オーストラリアでの生存者の情報を基に新聞に懸賞金付きの広告を打ちました。この広告には、ロジャーの詳細な外見や遭難の経緯が記されていました。

名乗り出た男

1865年10月、ニュー・サウス・ウェールズのウォガウォガで肉屋を営むトマス・カストロという男性が、自らがロジャーであると主張しました。この主張者は「主張者」として広く知られるようになります。彼は元使用人たちと接触し、自らの名乗りを納得させようとしました。また、レディ・ティッチボーンと何度も文通を行いました。

1866年12月、主張者はパリでレディ・ティッチボーンと会いますが、彼の体格はロジャーとはかけ離れていました。それにもかかわらず、未亡人は彼をロジャーだと認め、年々の支援を約束しました。

疑念と調査

その後、主張者がロジャーだと認めたのは、一部の人々に限られましたが、家族のほぼ全員は彼を詐欺師ではないかと疑いました。オーストラリアに調査を依頼したところ、主張者がアーサー・オートンである可能性が浮上しました。アーサーはワッピングで生まれた肉屋の息子で、南米旅行の後行方不明になっています。

民事訴訟

1868年、レディ・ティッチボーンが亡くなり、主張者は重要な後ろ盾を失いました。1871年には、ティッチボーン・パークを取り戻すために民事訴訟を起こします。この訴訟の目的は、彼がロジャーであることを証明し、権利を獲得することでした。

刑事裁判

1873年から1874年にかけて、主張者は刑事裁判にかけられました。彼の弁護人は、エリート層による陰謀があると主張しましたが、裁判中に証言の信憑性が疑問視されました。結局、主張者は偽証罪で有罪となり、14年の懲役刑にされました。

評価と影響

この事件は当時のイギリス社会に大きな影響を与えました。多くの人々が主張者や弁護人ケネリーに支持を表明しました。事件を基にした文学作品や映画も数多く存在します。研究者たちは主張者がアーサー・オートンであるという判定を受け入れる一方で、異論を唱える声も残っています。事件の詳細は火花を散らし、今日でも多くの議論を呼び起こしています。

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