ティノサ (潜水艦)

USS ティノサ (SS-283)：太平洋を駆け抜けたガトー級潜水艦

USS ティノサ (SS-283) は、アメリカ海軍のガトー級潜水艦の一隻で、艦名はカリブ海地域で大型アジを指す通称に由来します。太平洋戦争において12回の哨戒を行い、数々の戦果を挙げました。

起工から就役

1942年2月21日にカリフォルニア州ヴァレーホのメア・アイランド海軍造船所で起工され、同年10月7日に進水。1943年1月15日、ローレンス・ランドール・ダスピット少佐の指揮下で就役しました。就役後、ハワイ水域での訓練を経て、真珠湾に到着しました。

太平洋戦争での戦歴

初期の哨戒

最初の哨戒では日本近海で輸送船を攻撃しましたが、戦果は限定的でした。特務艦「石廊」を発見し攻撃したものの、護衛艦の反撃を受けました。しかし、この哨戒での経験が、後の戦果につながります。

魚雷の欠陥との戦い

2回目の哨戒では、特設運送船「第三図南丸」に対し多数の魚雷を発射するも、全て不発という事態に遭遇しました。帰投後、艦長は魚雷の欠陥を訴え、調査の結果、Mk14型魚雷の信管に問題があることが判明しました。この欠陥が修正されるまで、ティノサは不本意な戦いを強いられました。

戦果を重ねる

3回目の哨戒以降は、魚雷の信頼性が向上し、戦果を重ねるようになります。特務艦「風早」を撃沈し、輸送船団への攻撃で多くの戦果を挙げました。特に、4回目の哨戒では、2隻の輸送船を撃沈するなどの活躍を見せました。

南シナ海での作戦

5回目の哨戒では、南シナ海で敵船団を攻撃し、2隻の応急タンカーを撃沈。また、諜報部隊の揚陸作戦にも参加しました。その後も、輸送船の撃沈などで戦果を拡大しました。

ウルフパックの一員として

6回目の哨戒では、ウルフパックの一員として東シナ海やルソン海峡方面で活動しました。複数の輸送船を撃沈し、敵の輸送路を遮断しました。

日本海での作戦

7回目の哨戒では、五島列島沖で貨客船「賀茂丸」と応急タンカー「崑山丸」を撃沈しました。その後、オーバーホールのため西海岸に回航されました。

終戦

8回目と9回目の哨戒では、新開発されたFMソナーの試験に従事しました。10回目の哨戒では、トラック諸島方面で哨戒活動を行いました。11回目の哨戒では、日本海での作戦に参加し、複数の輸送船を撃沈しました。終戦により、12回目の哨戒は途中で打ち切られました。

戦後のティノサ

終戦後、ティノサはオーバーホールを受け、予備役となりました。朝鮮戦争勃発により再就役しましたが、休戦後に再び退役し、1958年に除籍されました。その後、対潜水艦戦訓練の標的艦として、ハワイ沖で沈められました。

栄光の記録

ティノサは、第二次世界大戦中に16隻、総トン数64,655トンの敵艦を撃沈しました。その戦功により、9個の従軍星章と3個の殊勲部隊章を受章しました。

参考文献

(issuu) SS-283, USS TINOSA, Part1. Historic Naval Ships Association.
(issuu) SS-283, USS TINOSA, Part2. Historic Naval Ships Association.
アジア歴史資料センター（公式）（防衛省防衛研究所）
財団法人海上労働協会（編）『復刻版 日本商船隊戦時遭難史』財団法人海上労働協会/成山堂書店、2007年（原著1962年）。
日本郵船戦時船史編纂委員会『日本郵船戦時船史』 上、日本郵船、1971年。
防衛研究所戦史室編『戦史叢書46 海上護衛戦』朝雲新聞社、1971年。
防衛研究所戦史室編『戦史叢書62 中部太平洋方面海軍作戦（2）昭和十七年六月以降』朝雲新聞社、1973年。
木俣滋郎『写真と図による 残存帝国艦艇』図書出版社、1972年。
サミュエル.E.モリソン『モリソンの太平洋海戦史』大谷内一夫（訳）、光人社、2003年。
Bauer, K. Jack; Roberts, Stephen S. (1991). Register of Ships of the U.S. Navy, 1775-1990: Major Combatants. Westport, Connecticut: Greenwood Press.
Blair,Jr, Clay (1975). Silent Victory The U.S.Submarine War Against Japan. Philadelphia and New York: J. B. Lippincott Company.
Friedman, Norman (1995). U.S. Submarines Through 1945: An Illustrated Design History. Annapolis, Maryland: United States Naval Institute.
* Roscoe, Theodore. United States Submarine Operetions in World War II. Annapolis, Maryland: Naval Institute press.

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